第5回アメリカンドリームの果ては「郵便番号で決まる人生」

有料記事2つのアメリカ 見えない境界のある街から

ペンシルベニア州ヨーク=大島隆

連載「2つのアメリカ 見えない境界のある街から」

かつてないほど分断が進むアメリカは、どこへ向かうのか。大統領選挙の激戦州ペンシルベニア州の街ヨークで、「二つのアメリカ」の境界線上にある場所を見つけた。この地に住みながら、アメリカ社会の今を伝えるルポの5回目。(敬称略)

[PR]

 ヨークの街を歩いていると、あちこちで見かける光景がある。教会やNGOの事務所前で、食料を受け取る人々の姿だ。

 生活に困る人たちに食べ物を配る活動は「フードバンク」「フードパントリー」と呼ばれ、いまアメリカ各地でかつてないほどの規模で展開されている。新型コロナウイルスの感染拡大で、仕事を失い生活が困窮している人が急増したためだ。

 この地域で最大規模の「ヨーク郡フードバンク」は、急増する需要に対応するため、3月末に郊外の空き店舗を借り受け、新たな配布拠点をつくった。

 野球ができそうなほど広い空き店舗の中でフォークリフトが走り回る。数人の専従スタッフのほか、多いときで40人ほどのボランティアが作業をしている。私も月に数回だが、ボランティアの一人として箱詰めの作業を手伝っている。

 段ボール箱に入れる食料は、豆やスープ、果物などの缶詰のほか、牛乳やチーズ、米、芋類などだ。食料が詰まった段ボール箱はかなりの重さなので、それなりに体力を使う。3時間休みなしの作業が終わると、ボランティア同士が「いい運動になった」「ジムに行く必要がないね」などと声を掛け合う。

 ボランティアと話している限りでは、コロナ禍の中で「自分も何かできれば」と初めて登録した人が多い。ボランティア希望者はネットで登録する仕組みだが、2週間先まで定員が埋まっていることも多く、アメリカの市民社会の底力が垣間見える。

「自分がここに来ることになるとは」

 責任者のザック・ウォルゲム…

この記事は有料記事です。残り2790文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

アメリカ大統領選2020

アメリカ大統領選2020

共和党のトランプ大統領と民主党のバイデン前副大統領の2候補によって争われる11月3日のアメリカ大統領選。最新の発言や取材から、両候補の動きを追います。[もっと見る]