第15回トランプ氏がまき散らした不寛容 インド人にも連鎖した

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 移民やイスラム教を敵視するトランプ米大統領の言動は、内外に不寛容な空気をまき散らした。米国内のインド系住民は差別の被害者となったが、逆にトランプ流の排除と分断の政治に共鳴するインド人も増えている。

 2006年から米国に住むインド系のIT技術者、アロク・マダサニさん(35)は、16年の前回大統領選から約3カ月後の夜、カンザスのバーでインド系の同僚(当時32)と過ごしていた。

 そこに見知らぬ白人の男が近づいて来た。「どこから来た。なぜここにいる」。アロクさんらは「エンジニアとしてビザを持ち、合法的に住んでいる。インドから来た」と説明。すると男は「そのビザのせいで俺たちが代償を払っている。ここはお前たちのいる所ではない。俺たちの国から去れ」と叫んで銃を撃った。

 アロクさんは左足を撃たれ、同僚は死亡した。「当時は移民への差別的な言葉が飛び交っていた。きっと犯人もそれに影響されたのだと思う」と振り返る。

 「メキシコは米国に犯罪者やレイプ犯を送り込んでいる」「米国にいる何千人ものアラブ人は、同時多発テロで崩れる世界貿易センタービルを見て歓喜した」。事件前、トランプ氏の差別的な発言がメディアで飛び交う状況に、亡くなった同僚の妻は怖がっていた。その同僚は生前、「仕事に励んで普通に生活していれば、大丈夫だ」と話していたという。

 米国のNGOによると、前回の米大統領選後の1年間に起きたインドやパキスタンなど南アジア系へのヘイト犯罪は302件で、前年より45%増えたという。

 選挙前から移民やイスラム教への差別発言を繰り返していたトランプ氏は就任後まもなく、イスラム圏の中東・アフリカ7カ国からの入国を一時禁止した。アロクさんらを撃った男は犯行時、中東や北アフリカ出身者の蔑称を叫んでいた。

 米国人の雇用を外国人から守る「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ政権は、IT企業などで働く専門性の高い外国人労働者が利用する「H―1B」ビザの発給も厳格化した。米国人より賃金の安い外国人労働者の流入を抑えることを狙ったものだが、同ビザの取得者の約7割がインド人だ。在米IT技術者のアジル・グプタさん(30)は「結婚式を挙げるためにインドに帰国する予定だったが、戻ってこられなくなると思った。結婚を延期せざるをえなかった」と嘆く。

熱烈な支持、なぜ広がる

 そんな差別の犠牲となったインド系米国人の間で、トランプ氏を熱烈に支持する層が広がっている。

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 インド政府によると、在米イ…

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