【動画】大阪都構想の是非を問う住民投票が告示された

 大阪都構想の是非をめぐる住民投票が12日、告示され、賛成、反対両陣営が各地で一斉に声を上げた。5年前に続き2度目の選択を迫られる有権者は、SNSで意見を募る「#ニュース4U」取材班に様々な思いを寄せた。大阪の行方が決まる投開票日まで3週間だ。

 12日午前5時半。いつも通り家族の朝食の準備をしていた大阪市福島区の看護師の女性(37)は、テレビのニュースで都構想住民投票の告示だと思い出した。

 「都構想の内容は正直今もあまり分かってない」と言う。新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあり、職場は人手不足の状態が続く。子育ても忙しい。この日も長女を保育園に送り届け、自転車で勤め先の病院に出勤した。「でも多分今回も賛成に投票すると思う」

 兵庫出身で、20年近く大阪市内に住む。仕事を続けながら子どもを産むことに不安があったが、維新の橋下徹市長時代、市は公立中学に給食を導入し、小中学校の普通教室にエアコンの設置を始めた。「無駄を省いて必要なところに税金を回してくれている」と感じ、前回2015年の住民投票で賛成に投じた。

 5年後の今回。コロナ禍で大阪市は小中学校の給食費を今年度は所得制限なしで無償化し、大阪府は医療従事者らに支援金を出した。女性の元にも5万円分のクオカードと、「大切な命を守ってくださり、本当にありがとうございます」と書かれた吉村洋文知事名の手紙が届いた。「維新を信じる。都構想でもっと住みやすい大阪にしてほしい」

 大阪市で生まれ育った主婦(58)は「反対。一度否決されたものを、税金を使ってまた問う姿勢が支持できない」と言う。

 前回は賛成した。町内会の活動に携わっており、「毎年色々な団体に賞状を贈っていて、そのために高い額縁を購入するなど、一部の人が既得権益にしていた。真面目に頑張っている人が報われるよう、橋下さんとこのまちを変えたいと思った」と振り返る。

 都構想は否決されたが、「その後の大阪は維新が言うような昔の『不幸せ(府市あわせ)』な状態に戻るどころか、どんどん住みやすいまちになった」と感じる。「わざわざお金をかけて大阪市を特別区に解体しなくても、政治家が適切に手腕を振るったら今の仕組みのままで暮らしやすいまちになる」

 町内会の仕事も簡素化され、地域の集まりや祭りも和やかでみんなが納得して実施できるようになった。それが特別区に再編されると、地域で築き上げてきたものが壊されるのではと不安を感じるようになった。だが、テレビや新聞で都構想の住民説明会の様子を見ても、「メリットや賛成意見しか紹介されていない。私ら住民の不安に適切に答えてくれていない」と感じる。「維新は支持する。でも都構想は反対。投票して民意を示します」

 決めかねる人もいる。

 「賛成でも反対でもない。投票に行かないか、白票で出すつもり」。大阪市鶴見区で地域情報紙を発行する吉村大作さん(40)は言う。チャリティー事業の企画運営を行うNPOの代表も務める。

 父親が1975年に立ち上げ、12年前に受け継いだ地域情報紙「ローカル通信」は鶴見区限定。地元の人や店を紹介し、住民から寄せられた声を元に取材する。地元密着とうたってきただけに、「特別区になったら対象を鶴見区以外にも広げるのか、情報紙の名称はどうするのか、地域密着でできるのか悩ましい」と頭を抱える。コラムにも「鶴見区がなくなることで商売の仕方がガラリと変わりそうで怖い気持ちが大きいのは否めない」とつづった。

 都構想に関する説明を聞き、現行制度のままでも、特別区が設置されても、「賛否が拮抗(きっこう)する制度にはそれぞれに長所と短所がある」と感じた。仕事のことを考えると、「どちらにも決められない」のが正直なところだ。

 自分は賛否を投じないが結果がどちらになっても、「しっかり受け止める」と決めている。今は経済活動を通して大阪を活性化させ、暮らしを良くすることに努めたい。「住民投票で決まった制度を、自分たち住民がチェックしていくことが必要だ」(山根久美子、寺尾佳恵)

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■維新と公明、合…

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