日米のIOT業界で会社を興したり、新しい価値を創造するベンチャー企業のアドバイザーを務めたりしてきた外村仁さんは、親しい人から「CFO(チーフ・フード・オフィサー)」と呼ばれるほどの食通でもあり、日夜おいしい食べ物を求めての研究に余念がない。7月には『フードテック革命』を監修・共同出版。世界最先端のフードビジネスと、その背景にある地球環境への危機意識と持続可能社会への大きなうねりについて聞いた。

朝日地球会議にも登壇
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 ――小さいころから、食べたり料理したりすることがお好きだったとか。

 「見よう見まねでマドレーヌをつくったりしていました。虫を飼ったり、ラジオをつくったりするのと同じ感覚です。この材料を混ぜて焼いたらどうなるのか、と試してみるのが面白かった。90年代の終わりに妻がフランスの大学で経営学修士(MBA)を取得する間や、米シリコンバレーで起業した会社を売却した後、しばらく主夫として毎晩食事をつくったことも、食に関する興味に拍車をかけました」

 「2010年ごろから米西海岸のIT好きの間で新しい調理器具の制作がちょっとしたブームになりました。マイクロソフトの元CTO、ネイサン・ミアボルトが料理を科学的に徹底分析した『モダニスト・キュイジーヌ』を出版するなど、シリコンバレーが『料理はサイエンスだ!』と関心を寄せるようになったのです。これは、面白い流れが生まれている、と私も取り組むようになりました」

 ――今年9月30日には、日本の食品大手6社と海外のベンチャー企業とを結んで新たな技術や商品の開発を目指す「フードテックスタジオ バイツ!」を立ち上げました。

 「危機意識からです。日本はおいしいものが食べられる国として、世界中から称賛されている。ですが、食の分野で革命とも言えるこんなに大きな変革が起きているのに、日本は気づいていない。このままだと、携帯電話市場が米アップルのiPhone(アイフォーン)に席巻されてしまったようなことが起きてしまう、と」

 「数年前から日本で講演などをするたびに呼びかけてきたのですが、なかなか動かなかった。食品業界に限りませんが、日本の大企業は、スタートアップ(新たな価値を創造するベンチャー企業)の世界に飛び込むのも招き入れるのも苦手。世界のスタートアップからも『会議ばかりで決断が遅く、面倒くさい』と敬遠されがちです。なので、我々が世話役として協力することで、なんとか業界を動かしていこうと。幸い、準備期間を含め、この1年で日本のみなさんの意識もずいぶん変化してきまように思います」

 ――とはいえ、「フードテック」という言葉には、まだなじみがありません。2025年には、世界で700兆円市場になると予測されていますが、どのような分野を指すのでしょう。

 「過去の食品技術をざっくり言…

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