ノーベル文学賞に米女性詩人ルイーズ・グリュックさん

ストックホルム=下司佳代子
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 スウェーデン・アカデミーは8日、2020年のノーベル文学賞を、米国の詩人、ルイーズ・グリュックさんに授与すると発表した。選考の実務を担ったノーベル委員会のアンデルス・オルソン委員長は、「飾り気なき美しさを伴って個人の存在を普遍化する彼女独特の詩の編み方に対して」贈るとした。

 オルソン氏によると、グリュックさんの作品は明快さを追求することを特徴としており、子ども時代や家族の生活、両親やきょうだいとの緊密な関係が主要なテーマになっている。普遍性を求める中で、神話や古典的なモチーフからインスピレーションを得ているという。オルソン氏は「彼女の厳格さや、単純な信仰の教義を受け入れようとしない点は、(19世紀を代表する米国の女性詩人)エミリー・ディキンソンに似ている」などと評価した。 アカデミーをめぐっては17年秋、会員の夫で文化界に強い影響力を持つ男の性的暴行疑惑が浮上した。世論の反発と組織改革をめぐる内部の対立により、18年は同賞発表を見送らざるを得なくなった。19年は18年と19年の2年分を一度に発表。今年から通常のスタイルに戻った。

 賞金は1千万スウェーデンクローナ(約1億2千万円)。賞を運営するノーベル財団の財政状況が安定し、昨年より100万クローナ増えた。毎年12月10日にストックホルムである授賞式は、新型コロナウイルスの感染予防のためオンライン形式に変更され、メダルは受賞者の国で大使館などを通じて授与される見通しだ。(ストックホルム=下司佳代子)

ルイーズ・グリュックさん略歴

 1943年、米ニューヨーク生まれ。コロンビア大などで学び、現在はイエール大教授。アメリカ現代詩で最も著名な詩人の一人とされる。

 詩集「Firstborn(ファーストボーン)」(68年)でデビュー。自伝的な要素をテーマとする作風で、「アキレスの勝利」(85年)などで国内外で広範な読者を獲得した。

 93年に「The Wild Iris(野生のアヤメ)」でピュリツァー賞、2014年に「Faithful and Virtuous Night(誠実で清らかな夜)」で全米図書賞を受賞している。

 アメリカ現代詩に詳しい原成吉・独協大学教授の話

 米国では10本の指に入るといわれるほど有名な詩人。1990年代初頭に発表した「野生のアヤメ」がピュリツァー賞を受賞し、一躍知られるようになった。たとえば野生の植物に託して自己の内面を表象する、そのメタファーの使い方がとても巧みだ。

【動画】ザ解説)ノーベル賞2020

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