金閣寺、境内で無許可工事 室町期の盛り土の一部壊れる

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高井里佳子
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 世界遺産金閣寺(鹿苑寺(ろくおんじ)、京都市北区)が、文化庁などへの必要な申請をせずに境内で工事し、室町時代に造成されたとみられる盛り土(土壇)の一部を壊していたことがわかった。京都府京都市が6日、発表した。金閣寺は「意図的ではなかった」と説明している。調査を指導した文化庁は「悪質性はない」とみており、行政処分はしない方針だという。

 市などによると、寺は2013年以降、境内東側の庭園部分で仮設売店(既に撤去済み)やトイレを相次いで建てた。寺から受注した業者は売店工事に合わせて地中に排水管を設置した際、室町時代に造られたとされる土壇(高さ約2メートル、約40メートル四方)の端付近を長さ1メートル、幅最大40センチ、深さ40センチにわたって掘り、壊していた。また、トイレ工事の一環として、同じ土壇の別の場所に盛り土や貼り石を施していた。

 金閣寺の庭園は国が特別名勝と特別史跡に指定している。そのため、現状変更の工事は、文化財保護法に基づき文化庁長官などの許可が必要となる。寺は排水管を地上に設置する申請を出していたが、土壇を掘って排水管を埋設する工事は申請していなかった。

 この問題は、市埋蔵文化財研究所の関係者による指摘がきっかけで発覚した。関係者は6月、トイレ工事の際に土壇の形状が違法に変更されたと主張。土壇が室町幕府の3代将軍、足利義満(1358~1408)が建てたとされる七重塔「北山大塔」の土台だったとして、金閣寺による原状回復を行政指導するよう文化庁に申し立てていた。

 調査した府と市は、指摘箇所での損壊がないことを確認したが、売店工事で土壇が壊されていたことが明らかになった。土壇が「北山大塔」の一部だったかなど歴史的価値については判断していない。なぜこうしたミスが起きたかは、金閣寺が内部調査を進めている最中で、はっきりわかっていないという。文化庁は、土壇の徹底的な破壊ではなく、業者が作業を勘違いした可能性もあるとみている。

 今後、府と市、金閣寺、文化庁で協議し、最終的な措置を決める予定という。

 この土壇が何のために造られたかについて、菱田哲郎(てつお)・京都府立大教授(考古学)は「盛り土の状況などから、建物の基壇だった可能性が十分に考えられる」と指摘している。

 現地説明会は実施しないが、現場は7日午後2~4時に一般公開される。来場者向けに資料を用意し、府と市の担当職員が質問に答える。問い合わせは府文化財保護課(075・414・5903)へ。

届け出なしの工事、過去にも

 世界遺産・金閣寺(京都市北区)の境内で、必要な手続きをせずに工事が実施されていたことが分かった。詳しい原因は調査中だが、文化庁は「悪質性は少ない」と見ている。どういうことなのか。

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