たかじんに注いだ視線と都構想 文筆家のややこしい感情

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 大阪市を廃止して四つの特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票は、5年前に続いて2度目となる。大阪出身でいまは神戸で文筆活動をしている平民金子さんの目にはどう映っているのか、寄稿してもらった。

へいみん・かねこ 文筆家・写真家。1975年大阪生まれ。国内外を転々としたのち、2015年から神戸市在住。著書に、神戸市広報課のウェブサイトに連載したエッセーをまとめた「ごろごろ、神戸。」(ぴあ)がある。

 二十年ほど前に、生まれ育った大阪を離れた。たまに帰省すると「大阪がなつかしいやろ?」と言って母は私に大量に録(と)りためたやしきたかじんの番組を見せてくれた。正直そこまでの興味はなかったが、あまりにもうれしそうに自分のコレクションを見せてくれる母の表情が良くて、深夜に並んでテレビを見ていた。まだ大阪維新の会も出来ていない時代だった。

 現在私が暮らす兵庫県神戸市でもし兵庫都構想が打ち出され「神戸市廃止・特別区設置についての住民投票」が行われても、まず賛成派が多数になる事はないだろう。大阪で都構想が実現した場合の住所表記例を参考にすると、兵庫都構想が実現した場合、これまで兵庫県神戸市兵庫区東出町と書いていた住所は兵庫県南区(区名は仮称)兵庫東出町などとなり、住所から「神戸」の文字が消えてしまう。「神戸市をなくしたらあかん」、政策内容と直接関係のないこんな拒否反応が必ずしも良い事だとは思わないが、神戸市の廃止は政治的立場の違いを超えてあっさり否決されてしまう事が想像出来る。自分が暮らす市の廃止や名前の消失は住民にとってそれくらいインパクトが大きい。

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 「大阪市廃止・特別区設置に…

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