床に通気口、電力は地元産…かまぼこ老舗の「脱・豊か」

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藤えりか
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 起きてから寝るまで、いや寝てからも、暮らしに欠かせない電気。それを地元で作ったエネルギーでまかない、自ら節電省エネにも取り組む老舗企業が、神奈川県小田原市にあります。慶応元年(1865)創業の鈴廣かまぼこ。旗振り役の鈴木悌介副社長(65)に聞くと、東日本大震災で感じたリスクと、年々深刻化する気候変動への危機感がひしひしと伝わってきました。

 コロナ禍で減った観光客が少しずつ戻りつつある、小田原市の風祭駅。その駅前に、銀の鈴のマークをつけ、つつましやかにたたずむ3階建ての鈴廣かまぼこ本社がある。玄関には板格子の目隠し、ロビーや廊下には床の間と、見た目はさすがの和風。だがその実、エネルギー対策を施した近代的な造りとなっている。

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 鈴木さんの案内で、2015年に建てられた社屋3階のオフィスに上がると、足元からさわやかな風が立ちのぼっているのを感じた。見下ろすと、床に通気口が。

 「建物の断熱材も効いていて、快適なんですよ」と鈴木さん。見上げると、高い天井には太陽光発電による照明が。外の日の光を効率よく取り込む窓もぐるりと配され、ほどよく明るい。空調には地中熱や井戸水を利用。結果、社屋で使うエネルギーは「通常の建物より平均で約6割削減できている」という。広報課職長の松田千尋さんも「旧社屋と違って冬も寒くなく、快適になりました」と話す。

 同社が契約する電気は、東京電力から地元の湘南電力に全て切り替えて久しい。省エネ努力とあいまって、電気料金の支払額は「下がった」と鈴木さんは言う。

 湘南電力は神奈川県内で発電された再生可能エネルギーを調達して地元に供給する、「地産地消」を掲げる新電力会社だ。鈴廣など地元企業や小田原市などが出資して設立した発電会社「ほうとくエネルギー」から、太陽光発電などでおこした小田原産の電力の供給も受けている。

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「食と地球環境はつながっている」

 鈴木さんは以前から、かまぼこの老舗を担う立場として、環境問題や地域のつながりを考えてきた。「食べるというのは、人間の勝手な理由で自分以外の命を使うこと。つまり、命は絶えずバトンタッチされてつながっている。自分だけよければいいというのはあり得ない。食の仕事を通してずっと、そう感じていました」

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