「模範的な農場」でまさかの豚熱 ワクチン接種に空白期
豚熱(CSF、豚コレラ)に感染した豚が群馬県内の養豚場で初めて見つかったことを受け、全国4位の“養豚県”に衝撃が走っている。感染対策に注意を払っていた「模範的な農場」(県幹部)とされる養豚場で、なぜ感染してしまったのか。農林水産省の調査チームが感染経路の特定などを急いでいる。
「安心だと思っていたところに抜け穴があった」。県養豚協会の岡部康之会長(64)は危機感をあらわにする。県は昨年10月から、近隣県の飼養豚や県内の野生イノシシの感染確認を受け、県内の豚へのワクチン接種を開始。今年1月までに初回接種が完了していた。国内でも約半年、豚の感染確認はなかっただけに「まさか」の事態だった。
今回感染が分かった養豚場の生後70日前後の子豚3頭はワクチン未接種だった。県畜産課によると、生後50日前後までは母豚からの移行抗体があるため接種の対象外。今回の3頭はこの期間を過ぎていたが、下痢などの症状があったため接種を見送っていたという。
感染経路の解明はこれからだ。
6月以降、半径5~6キロ圏で野生イノシシの感染が4頭確認されていたこの養豚場では、豚を守る消毒を徹底。イノシシを介した感染を防ぐため、侵入を防ぐ柵も設置していたという。
ただ、9月上旬から下痢などの症状で1日あたり数頭から20頭、これまでに計約200頭が死んでいた。すでに処分済みでこれらの感染の有無は分かっていない。
半径10キロ圏内にある18の養豚場では、すべてワクチン接種済みか、移行抗体がある生後50日未満の子豚で、今回の養豚場のような未接種の豚はいないという。
県養豚協会の岡部会長は「接種の頻度を上げることが重要だ」と話す。現状ではワクチンを接種できるのは県が指定する家畜防疫員の獣医師だけで、月1度程度しか接種を受ける機会がない農場もあるといい、家畜防疫員の増員や農家自ら接種できるようにすることなどを訴えている。(森岡航平、中村瞬)
養豚農家「心が休まらない」
生産現場には不安が広がる。「今回の養豚場のように、ワクチンの空白期間があると怖い」。年間約3千頭を出荷する高崎市の養豚農家の男性(67)は話す。高齢のため夫婦で営んでいた養豚を今春やめたばかりの市内の女性(77)は「ただでさえ生きものが相手で24時間休めないのに。知り合いが多く心配」。
群馬県内のほぼ3割にあたる…
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