第3回「スポーツバカ」だった私 子どもを路頭に迷わせる前に

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編集委員・中小路徹

 「スポーツバカ」だったことを告白したい。スポーツ推薦をめぐる取材を続けてきた私自身のことだ。

 中学から大学までサッカー部に在籍した。スポーツ推薦は選択肢にもならない実力。学校から与えられる勉強をこなすことで進学した。

 だが、部活動以外のことにどれだけ視野を広げられていたかというと、極めて怪しかった。

 「スポーツをやっていれば認められる」という軽薄な思い込みがあり、いわゆる体育会気質に漬かっていた。自分で考え、物事を探究できるせっかくの大学の環境を無駄にした。

 この体験は多分に個人的なものだが、運動部活動などを取材していると、子どもの頃からスポーツ偏重の道を歩ませてしまう世間の土壌があると思う。

ある男子が語った学力面の現実

 スポーツ推薦で入学した私立高を退学した男子に話を聞いたことがある。上級生が下級生をいじめる部の体質が合わず、軌道修正を決意したのだが、壁になったのが学力だった。

 英語は中学1年で学ぶbe動詞が理解できず、小学校レベルの分数の計算もあやふやだった。

 スポーツ推薦による進学を前提とし、勉強してこなかったのだそうだ。少年チームの指導者にしても親にしても、周囲の大人が選手としての飛躍を期待するのはいいが、「スポーツさえしていればいい」というすり込みは、子どもの人生を狂わせかねない。彼は基礎から猛勉強をして公立校に転入した。

 いくつかの競技がトップレベルにある私立大の教員からは、スポーツ推薦の学生のリポートを匿名で見せてもらった。

 たったの感想1行で終わっていたり、ひらがなばかりだったりした。

 「これが現実です」

 教員は苦笑するしかなかった。スポーツ推薦制度が「スポーツさえすれば進学できる」という悪弊を生んでいる一例だと感じた。

勉強を否定する顧問

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 高校の指導者が特定の大学と…

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