外交の舞台に立たなかった新リーダー 集まる海外の関心

有料記事菅政権発足

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 菅義偉氏が首相に選出された16日、各国メディアは「イチゴ農家の息子」「影の首相と呼ばれていた」などと日本の新たなリーダーの横顔を一斉に報じた。安倍政権からの政策の連続性に期待する声が目立つ半面、未知数の外交手腕に慎重な見方もある。

 米ホワイトハウスは16日に「トランプ大統領は、日米同盟の強化を含めた、自由で開かれたインド太平洋構想を引き続き進める用意がある。日米同盟はかつてないほど強固であり、トランプ大統領は菅首相と、これをさらに強化することを楽しみにしている」との報道官声明をだした。

 米国ではこれまで知られていなかった菅氏の人物像に関心が集まっている。官房長官時代の2019年に訪米しペンス副大統領らと会談したが、外交の表舞台に立つことが少なく国際的な知名度が低いからだ。

 ニューヨーク・タイムズは「日本の主要な政治家は政治一家出身のエリートが多いが、菅氏はイチゴ農家の息子だ」と紹介しつつ、「これまで日本のビジョンについて明確に示してこなかった」と指摘。CNNは「秋田県で育った農家の息子で、実務家として舞台裏で物事をまとめる政治家として知られている」などと評した。

 米外交問題評議会のシーラ・スミス上級研究員は、新内閣が安倍内閣からの継続を打ち出したことは「貿易交渉などにおいて米国にとっても前向きなことだ」と評価する一方、「外交を得意とした安倍前首相と菅首相は好対照だ。新内閣は国内課題への取り組みを重視する姿勢を示しているが、諸外国は『日本が再び内向きになるのかどうか』も見ている」と指摘した。

 中国の習近平(シーチンピン)国家主席は祝電を送り「中日はアジアと世界の重要な国だ。安定し協力的な中日関係は世界の平和と繁栄に貢献する。新時代の要求にかなう関係の構築を進めたい」とした。李克強(リーコーチアン)首相も祝電を出した。

 新華社通信は菅氏を「安倍政権ですべての重要政策に関わった」として「『影の首相』と呼ばれていた」と紹介。環球時報は「外交能力については多くの人が評価を保留している。中米対立が激しくなるなかで、日米関係を深めつつ中日関係を安定させることは簡単ではない」との専門家の声を伝えた。

 台湾の外交部(外務省)は蔡英文総統からの祝意を日本に伝え、「菅首相は官房長官として、安倍晋三首相が進めた台湾に好意的な政策をサポートし、台湾が世界保健機関(WHO)に関与することも支持した」と指摘。「さらに双方の協力が深まることを期待している」とした。

 韓国の文在寅大統領も首相就任を祝う書簡を送り、「韓日関係をさらに発展させるために一緒に努力したい」と伝えた。韓国政府は「菅政権と積極的に協力して歴史問題を克服し、経済や人的交流など未来志向的な協力を強化していく」とのコメントを発表した。

 韓国メディアには、菅氏が安倍政権の継承を強調していることから、日韓関係の改善は期待できないとの論調が目立つ。東亜日報は、菅氏が閣僚の起用でも「安倍政権との連続性を重視した」と分析。安倍氏の弟の岸信夫氏の防衛相就任に注目し、靖国神社に参拝する「右翼性向の強い人物」と評した。

 一方、中央日報は菅氏は「農家の生まれで、現実主義的」と紹介。「首相交代をきっかけに雪解けムードへの期待もある」と伝えた。

 ロシアのプーチン大統領も祝電を送り、建設的な協力関係を築けば「地域の安定と安全保障の強化に貢献できる」と強調した。ロシアでは、プーチン氏と良好な関係を保った安倍政権の評価は高く、菅氏にも日ロ関係を重視するとの期待がある一方、日本への警戒心も根強い。モスクワ国際関係大学のドミトリー・ストレリツォフ教授はノーボスチ通信に、「日ロの政治対話はこれまでの勢いを失うだろう」と述べた。

 ドイツメルケル首相は「多国間主義、ルールに基づく国際秩序、自由貿易といった共通の価値観と利益を向上させよう」との談話を出した。

 英国のジョンソン首相は16日、「日英が先週確保した歴史的な自由貿易協定が、すでに強固な日英関係を新たな高みに引き上げてくれることを願っています」とツイート。日本語で「おめでとうございます!」と締めくくった。

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 各メディアも菅氏の人柄など…

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