少子化対策の失敗の本質 小児医療の現場から見えたもの

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聞き手・武田耕太
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 青森県立中央病院青森市)の小児科医、網塚貴介さん(60)は、長年、新生児医療の現場で、生まれたばかりの赤ちゃんの命を支えてきた。4年前、NICU(新生児集中治療室)を退院した子どもや家族を支援する「成育科」を院内に立ち上げ、障害をもった子どもや、日常生活を送るうえで人工呼吸器などの医療的なケアを必要とする「医療的ケア児」ら、NICUで救命された後の子どもを支援する立場になった。

 患者や家族と向きあうなかで、ずっと疑問に感じ続けてきたことがある。「この国では少子化対策をしていると言いながら、なぜ、こんなに多くの母親が困っているのだろう?」。そして、そこから「少子化対策の失敗の本質」が見えてきたという。小児医療の現場から見えてきた「失敗」とはどんなものなのか。「これは小児科医としての怒りです」と語る網塚さんに、話を聞いた。

ケアの担い手はほとんど母親

――長い間、小児医療に携わっていますね。

 20年以上、NICUで働いてきました。この間、新生児医療が進み、助かる命が増えました。一方で、医療的ケア児や発達障害児は増えてきています。発達に問題がなさそうに見えても、同年齢の子に比べて知能面での遅れがあったり、発達障害がみられたりする子どもも数多くいます。

 以前からこうした子たちのフォローアップに取り組んできてはいましたが、NICUを退院した後のフォローアップは、医療だけでなく、教育や福祉、行政に関係してきます。もはやNICUとの兼務では、退院後の子たちをしっかり支えることはできないと感じ、成育科を立ち上げました。

――少子化対策について考えるようになったきっかけはあるのでしょうか?

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 小児医療の現場にいると、病…

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