ひろしまタイムライン、共感に偏重する戦争企画の危うさ

有料記事

聞き手・宮田裕介
[PR]

 「もし75年前にSNSがあったら」という設定で、実在の被爆者が残した日記や手記などをもとに若者らが投稿するNHK広島放送局の企画「1945ひろしまタイムライン」。この企画は、新聞記者「一郎」、主婦「やすこ」、中学1年生「シュン」の計三つのアカウントが原爆投下当日など1945年の様子をつぶやき、話題を呼んだ一方で、「シュン」の「朝鮮人の奴(やつ)ら」などの記述が「差別を扇動している」などといった批判を受けた。若い世代に戦争体験を届けようという試みは、何が問題だったのか。メディア史に詳しい佐藤卓己・京都大学教授に話を聞いた。

 ――「ひろしまタイムライン」で起きた問題をどう見ますか。

 NHKはこの企画がなぜ問題にならないと思ったのか、素朴に疑問に思いました。ツイッターは140字という文字数制限のある上、前後の文脈が切り出されてしまう可能性が高い、いわば「脱文脈化」のメディアです。注釈もなく「朝鮮人だ!! 大阪駅で戦勝国となった朝鮮人の群衆が、列車に乗り込んでくる!」(「シュン」、8月20日)といったツイートをすれば、前後の文脈なしに朝鮮人の暴力的行為だけが独り歩きしてしまいます。

 ツイッターが歴史を語るメディアとしてふさわしいのか、という問いがなぜ生まれなかったのかということが根本的な問題だと思っています。例えば、漫画「はだしのゲン」でも朝鮮人との関連で暴力的なシーンは描かれていたと思いますが、問題が差別にあるとわかるように背景が示されているので、全体の文脈を見れば問題にはなりません。

ここから続き

 この問題を「戦争関連で『朝…

この記事は有料記事です。残り1801文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら