どん底の転移から「足し算命」 希少がん患う緩和ケア医

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聞き手・高橋美佐子
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 終末期のがん患者やその家族に寄り添い、体だけでなく心の痛みを和らげる緩和ケア。医師の大橋洋平さん(57)は自らも完治が見込めない希少がんを患いながら、終末期を支える仕事を続ける。死が近づくなか、心と体の苦痛にどう向き合っているのか。緩和ケア医が見いだした「今を生きる秘訣(ひけつ)」を聞いた。

 おおはし・ようへい 1963年三重県生まれ。三重大医学部卒業。2004年から愛知県の海南病院に勤務。近著「がんを生きる緩和ケア医が答える命の質問58」(双葉社)。

 ――緩和ケア医として2千人以上を見送ってきた大橋さんが2018年6月、がんになりました。

 「真夜中、トイレへ行くとタール状の下痢便が大量に出たんです。とっさに思ったのが『昨夜イカスミ食べたっけ?』。そんなもん、我が家の食卓に並んだことありません(笑)。診断は、胃の外側に直径10センチの『GIST(ジスト)(消化管間質腫瘍(しゅよう))』。手術で取り切れたとはいえ、病理の結果は驚くほど悪性度が高かった。医者の端くれ、『そんなに長く生きられへん』と腹をくくりました」

 「当時の体重は100キロ超。食べるのが大好きで、早食いが自慢だった人間が胃をほぼ全摘です。抗がん剤を続けるために食べなくちゃと焦るのですが、どんどん痩せて瞬く間に40キロも減り、社会復帰は無理と落ち込みました」

 ――それでも手術3カ月後、仕事を本格的に再開します。

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 「家にいたって再発転移のリ…

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