安倍政権7年8カ月とは? マイノリティーに聞いてみた

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玉置太郎 花房吾早子
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 第2次安倍政権は「一人ひとりが、個性と多様性を尊重される」という「1億総活躍社会」の実現を目標に掲げてきた。この社会のマイノリティー(少数者)にとって、政権誕生からの7年8カ月はどんな時代だったのか。外国人、性的少数者らに尋ねた。

外国人労働者受け入れ 定住にはつなげず

 水戸市ベトナム料理店を営むレ・ヴァン・タンさん(27)の来日は、政権が誕生した2012年だ。コンビニや牛丼店のアルバイトで学費を稼ぎ、茨城大工学部に進学。卒業後の昨年8月、念願の店を開いた。

 この7年で在日ベトナム人は8倍に増え、41万人になった。経済成長した中国に代わる、最大の技能実習生送り出し国だ。日本語が堪能なレさんにも、在学中から通訳の依頼が相次ぐようになった。

 今年初め、茨城県ベトナム人協会の設立に加わり、コロナ禍で失業した実習生の支援を続ける。東京の弁護士が無料相談を請け負ってくれ、食料やマスクを寄付してくれた日本人も多い。だが、ベトナム人従業員のアパート探しで今月、外国人だからと入居を断られた。「この7年、多くの人に受け入れてもらったけど、ごく一部にこんな考えがある。やっぱりショックでした」

 日本に住む外国人は12年末の200万人から、7年間で90万人増えた。3倍に増えた技能実習生が、人手不足の製造業や建設業、農業などを支える。政府は17年、実習期間を3年から5年に延ばし、対象職種に介護を追加。昨年は実習後も最長5年働ける「特定技能」資格を新設した。

 一方で、実習生の家族帯同は認めず、定住資格への道もほぼない。「安倍政権は労働力は受け入れるが、定住はさせないというメッセージを一貫して発信し続けてきた」。日系ブラジル人3世のアンジェロ・イシ武蔵大教授(53)は指摘する。

 日系人の就労が自由化された1990年、自身も移民研究のため来日。ずっと感じてきた「日本社会が外国人に抱く抵抗感」に対し、「安倍政権は確信犯的に無策だった」と話す。

 コロナ禍でブラジル人派遣労働者の解雇も相次ぐ。08年のリーマン・ショック後の状況が繰り返された。「日本社会の意識が生んだ、当然の結果ではないですか」

LGBTへの施策 「伝統的家族観」は変えず

 LGBTなど性的少数者に対する政策も、安倍政権の間に動きが活発化した。

 東京都渋谷区世田谷区が全国で初めて同性カップルへの証明書発行を始めた15年以降、超党派の国会議員や地方議員による議員連盟が発足。16年には、自民党内に「性的指向・性自認に関する特命委員会」ができた。性的少数者へのいじめやハラスメントの防止など33項目を政府に要望し、関係省庁から現場への周知や法改正に結びついた。

 自民議員に働きかけたのが、同性愛者として特命委のアドバイザーになった繁内(しげうち)幸治さん(59)だ。神戸市を拠点に20年にわたり、エイズウイルス感染者の支援に取り組んできた。

 当初は「同性愛者なんていない」などと言う議員に根気よく語りかけ、「誤解だった」と考えを変える姿を見てきた。「自民党はできることはやってきた。ここまでたどり着いたのは、想像以上に画期的だった」

 施策の積み重ねとは裏腹に、多様な性への理解が疑われる場面もあった。

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