ひろしまタイムライン、趣旨は新鮮だが…安田菜津紀さん

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聞き手・宮田裕介
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 「もし75年前にSNSがあったら」という設定で、実在の被爆者が残した日記や手記などをもとに若者らがツイッターで投稿するNHK広島放送局の企画「1945ひろしまタイムライン」。この企画は、新聞記者「一郎」、主婦「やすこ」、中学1年生「シュン」の計三つのアカウントが原爆投下当日など1945年の様子をつぶやき、話題を呼んだ一方で、「シュン」の「朝鮮人の奴(やつ)ら」などの記述が「差別を扇動している」などといった批判を受けた。

 若い世代に戦争体験を届けようという試みは、何が問題だったのか。フォトジャーナリストの安田菜津紀さんに話を聞いた。

     ◇

最初は共感「こんな伝え方があるんだ」

 ――「ひろしまタイムライン」で起きた問題をどう見ますか。

 趣旨自体は当初、共感するところもありました。内容を見ていると、広島原爆の8月6日ごろから緊迫した状況が広く拡散され、「シュン」や「一郎」「やすこ」の三つのアカウントに対し、温かいツイートを送る人もいました。それに若い方々にとって、なじみのあるツールを活用していくことは、この時代を生きた人たちのことをもっと知りたいという間口を広げた面もあったと思います。最初はこんな伝え方があるんだと、新鮮な思いで見ていました。

 ――「シュン」による朝鮮人に関する複数の記述が批判を浴びました。例えば、「朝鮮人だ!! 大阪駅で戦勝国となった朝鮮人の群衆が、列車に乗り込んでくる!」(8月20日)、「『俺たちは戦勝国民だ!敗戦国は出て行け!』圧倒的な威力と迫力。怒鳴りながら超満員の列車の窓という窓を叩(たた)き割っていく。そして、なんと座っていた先客を放り出し、割れた窓から仲間の全員がなだれ込んできた!」(同)というツイートです。これらのツイートをどう見ますか。

 当時どういう差別があったかということ自体を知ることは必要なこと。差別構造は残念ながら、当時に限ったことではなく現代に引き継がれてしまっているからです。だからこそあのツイートのように、むき出しの言葉をそのまま流しっぱなしにしたことに問題がある。また「朝鮮人」と主語を大きくしたことも、排斥につながることだと思います。このツイートはすでに「朝鮮人は野蛮で横暴だから排除しなければいけない」という趣旨の返信が連なっています。

 せっかく戦争について知る良…

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