災い転じて寄付広がる? コロナ禍で見えた変化の兆し

有料記事経世彩民

専門記者・木村裕明
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経世彩民 木村裕明の目

 新型コロナウイルスの感染が広がり、緊急事態宣言が出ていた5月、私が運営に携わっている都内の障がい児・者支援のNPO法人に、個人から100万円の寄付が届いた。

 1ケタ多いのでは? 振込用紙を確認した理事は、何度も0の数を数え直したそうだ。無理もない。これだけまとまった寄付が寄せられることはめったにないのだから。コロナ禍による収入減が財政難に追い打ちをかけるなか、とてもありがたいお志だった。

寄付文化に変化

 コロナ禍の影響か、寄付文化が根付いていないと言われて久しい日本に変化の兆しが見える。クラウドファンディング(CF)大手のREADYFOR(レディーフォー)が4月に立ち上げた「新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金」は、設立から3カ月で総額約7億円の寄付金を集め、国内のCF史上最高額を記録した。寄付をした人は2万人を超え、1万円以下の小口の寄付が9割近くを占めるという。

 基金は今年末まで寄付を集める予定だが、すでに125の団体に6億円を上回る助成を実行。最前線でコロナと闘う医療現場に加え、生活困窮者や障がい者など社会的弱者を支える団体への助成を重視してきた。こうした支援がクラスターの発生を防ぎ、医療現場を守ることにつながると考えているからだ。

 基金から1千万円の助成を受けたNPO法人「横浜コミュニティデザイン・ラボ(以下、ラボ)」も、そんな団体の一つだ。

 簡易宿泊所が立ち並び、日雇い労働者が集まる「ドヤ街」と呼ばれた横浜・寿町。コロナによる受注減に苦しむ障がい者の作業所を支援しようと、地域住民の有志が立ち上げた「寿DIYの会」が5月、地元や周辺の複数の作業所に防護ガウンを作ってもらい、防護具が足りない簡易宿泊所や介護事業所、診療所に配り始めた。街の一角に昨年オープンした交流拠点「ことぶき協働スペース」で、地域住民による防護ガウン作りも7月に開始。段ボールの型紙にあわせてビニールを裁断し、2人1組で手際よくガウンに仕上げていく。生活保護を受給する参加者には新たな就労機会となる。少ないながらも収入増が見込めるメンバーは「張り合いがある」と喜ぶ。

 こうした地域の取り組みをラボが支援し、作業所や地域住民が作ったガウンは、助成金を元手に最低賃金以上の水準で買い取る。作業所の工賃の低さは積年の課題だ。月給1万円ほどにとどまることも珍しくない。感染対策に必要な物資の提供と、工賃引き上げという課題の解決。一石二鳥を狙う戦略が光る。

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 ラボ自身も横浜市内に約45…

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