第4回福島「3割復興」の現実 安倍政権、難問に向き合わず

有料記事考 次期政権の課題

古庄暢 小手川太朗 編集委員・大月規義
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 東京電力福島第一原発から北西に7キロ、3月に開通した常磐自動車道の常磐双葉インターがある福島県双葉町の寺松地区。原発事故前は約60世帯150人ほどが暮らしていたが、放射線量が高い「帰還困難区域」とされ、いまも避難指示が続く。地区内を走る県道の両脇には雑草が生い茂り、手つかずの空き地や廃屋が目立つ。

 行政区長の石田翼さん(76)の家も、入り口近くの道路にバリケードがあり、立ち入りには町の許可がいる。原発事故の前は長男夫婦や孫ら9人で暮らしていたが、いまは避難先のいわき市で妻と二人きり。「できれば生きているうちに戻りたい。早く見通しを示してほしい」。町の調査では6割超の町民が故郷への帰還を断念しているが、石田さんは諦められないという。

 安倍政権は2013年8月までに、原発の被災地を放射線量の程度に応じて三つの地域に分け、避難指示の対象は福島県内の11市町村、住民約8万4千人に及んだ。それから約7年。5兆円超を投じ、線量の低い地域から除染やインフラ整備を急ぎ、約7割の地域で指示を解除した。

 しかし、いまも指示の対象は計2万2千人に上る。双葉町を含む7市町村に残る帰還困難区域では、国が「特定復興再生拠点」と認めたごく一部の地区を除き、大半で解除の見通しが立っていない。国は長期的には解除をめざすとしているが、具体的な計画はなく、早期の解除には消極的だ。復興庁幹部は「除染に多額の費用をかけて解除しても、ほとんど住民の帰還にはつながらない」と本音をもらす。

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 双葉町の伊沢史朗町長は先月…

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