北海道の町が独自の電線 大停電2年、電力は自ら守る

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長崎潤一郎
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 2018年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震で国内初のブラックアウト(全域停電)が発生し、北海道では最長2日間にわたり電気のない生活を強いられた。大規模な停電の再発に備えて、北海道の各地では電力会社の送電網から「独立」し、再生可能エネルギーで電気の供給を続ける取り組みを自治体や企業が始めている。

非常時は「独立」 太陽光の電気を供給

 北海道十勝地方の鹿追(しかおい)町。人口5千人余りの町が、「自営線」と呼ばれる電線を1年がかりで整備し、8月から電気を流し始めた。

 といっても、町内全域に電線を張り巡らせたわけではない。北海道の自治体としては平均的な大きさとはいえ、鹿追町の面積は山手線の内側の約6倍の400平方キロ。町によると、電線の整備には1キロあたり1億円かかり、全域をカバーするのは現実的ではない。

 対象は町中心部の半径300メートルほどのエリアに絞り、町役場や町民ホール、小学校などの公共施設9カ所をつなぐ。総延長は約3キロで、44本の電柱を立てた。近くに新設した太陽光発電所(出力計440キロワット)でつくる電気を、この電線を使って届ける。8月の小学校を皮切りに、10月上旬までに全ての施設への送電を始める。

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 ただ、太陽光でまかなえるのは、各施設で使う電気の3割程度にとどまる。このため、引き続き北電から電気の供給を受ける。これまでは施設ごとに別々だった契約を一括受電に切り替え、太陽光では足りない分を北海道電力から買う形にする。

 北電側で大規模停電が起きた場合は、互いの電線の境界点でシステムを切り離し、災害時に避難所となる町民ホールなどに電気の供給を続ける。太陽光発電所に併設した蓄電池などを使い、電力の需要と供給のバランスを調整する。

 大型発電所に頼らず、地域でつくる電気を地域で使う仕組みは「マイクログリッド」と呼ばれ、近年注目を集めています。記事の後半では、北海道最南端の地で風力を活用する東急不動産の取り組みも紹介します。

 この取り組みは環境省の補助事業で、17~20年度の4年間の計画だ。太陽光の電気を使って二酸化炭素の排出量を減らすのが主な目的だが、「ブラックアウトを機に地域のエネルギーを活用する意義はより強くなった」と鹿追町企画財政課の林大介係長は話す。

年580万円の「黒字」 採算確保にめど

 ブラックアウトでは、離島をのぞく北海道全域で295万戸が停電した。震源から約100キロ離れ、地震による直接的な被害はなかった鹿追町でも日常生活は大混乱した。自家発電機を動かし、町役場でコンセントを開放したところ、電気を求める町民が相次ぎ訪れた。携帯電話の充電はもちろん、「温かいご飯が食べたい」と炊飯器を持ってきた人もいたという。

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