震災の伝承館、有料?無料? 被災地でも分かれる判断

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力丸祥子
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 伝承館は震災や東京電力福島第一原発事故の被害の実態や教訓などを伝えるため、福島県双葉町の中野地区に建設。館内は「災害の始まり」「復興への挑戦」など六つのゾーンに分かれ、県が収集した津波や原発事故の被害を伝える実物や写真、資料など24万点の中から、大型スクリーンなども使って150点を展示する。語り部も常駐し、体験を来館者に伝える。

 入館料は県条例で定められ、県議会の2019年9月定例会では、一部の議員から「将来を担う児童生徒にはもちろん、広く開放すべきだ。入館料設定は高く、無料にすべき」との意見も出たが、賛成多数で可決された。県の担当者は「展示内容や設備を類似施設と比較、考慮した」と理解を求める。

 同じく震災の被害を伝える宮城県気仙沼市の「東日本大震災遺構・伝承館」は19年3月に開館し、入館料は大人600円、高校生400円、小・中学生300円。最上階の4階まで津波に襲われた県立高校の旧校舎が震災遺構としてそのまま保存され、3階まで津波で押し流された車や壊れた校舎などを見学できる。

 佐藤克美館長は「高さ12メートルの津波が来たら、こうなってしまうんだ、と目で見て感じられる場所。当初は『600円を払ってまで人が来るか』という意見もあったが、計画を超える方々に訪れてもらえている」と話す。

 一方、昨年9月に開館した岩手県の「東日本大震災津波伝承館」(同県陸前高田市)の入館料は無料。道の駅に併設された利便性もあり、8月27日に来館者が20万人を突破した。担当者は「震災の教訓を広く伝えるため、たとえ時間が無くても、多くの人に立ち寄ってもらいたい。これまで全国各地や世界中からいただいた支援への感謝も込めて無料にした」と話す。ふるさと納税でも、伝承館の管理・運営費を募り、これまで約150万円が集まったという。

広島・平和記念資料館は16年に値上げ

 高度経済成長期に相次いだ水俣病や新潟水俣病四日市ぜんそく、イタイイタイ病といった四大公害病の資料館の入館料はいずれも無料だ。

 熊本県水俣市に1993年に開館した「水俣病資料館」。担当者は「責任を持って後世に伝えていく必要があり、市の事業として運営している。水俣病を多くの人に知ってもらうため、入館は無料」と説明した。

 2012年開館の富山県立「イタイイタイ病資料館」の担当者は「風化防止を図るために積極的に啓発するという目的があり、入館料はなじまない」と話す。

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 広島市広島平和記念資料館

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