アナザーノート 秋山訓子編集委員
こんにちは、秋山訓子と申します。政治やNPO、多様性の担当です。日常から政治を考えたい、時にはグローバルな視点を加味しつつ……と思っています。
ニュースレター「アナザーノート」
アナザーノートは、紙面やデジタルでは公開していないオリジナル記事をメールで先行配信する新たなスタイルのニュースレターです。ライターは、政治や経済を専門とする編集委員たち。普段は表に出さない話やエピソードをお届けします。今回は8月25日創刊号をWEB版でお届けします。
15年ぶりの再会
その人は開口一番こう言った。「いやー、秋山さん、すみませんでした」。
覚えてたんだ、15年前のこと。
その人とは、小川淳也衆院議員。民主党、希望の党を経て今は無所属。この秋、立憲民主党と国民民主党の多くが合流するとみられる新党に参加する予定だ。
私は彼が当選まもない頃に事務所を訪ねた。彼の選挙演説は理想を熱くひたむきに語り、涙なくして聞けない――と聞きつけたからだ。
だが、彼はそういう薄っぺらなマスコミに辟易(へきえき)していたのだろう、私はものすごく邪険に扱われた(と、思えた)。ほんの少しだけ話を交わすと「忙しいのでまた連絡します」と言われ、「はい、近々お訪ねさせてください」と私は答えた。
それっきり連絡はなく、私も行かなかった。
彼も1年生議員で、取材対象としてどうしても話を聞かなくては困るというほどではなかったし(失礼)、政治家に邪険に扱われるのはしょっちゅうだし、永田町ではこういうことは珍しくない。彼は気になる議員の1人ではあったが、その後、縁がないまま15年が過ぎた。
で、今回言われたのである。
「あのときは連絡せずすみませんでした」
永田町ではこういうことは珍しい。約束を破られたほうは覚えていても、破ったほうがしゃあしゃあとしていることはよくある。
ああ、この人は誠実なんだな、自分が気になっていたことには向き合わずにいられない人なんだ、と感じた。
「細野さんや小池さんを見ると…」
なぜ彼を訪ねたかといえば、「なぜ君は総理大臣になれないのか」というドキュメンタリー映画を見たからだ。話題になったので知っている人も多いだろう。
映画では愚直に誠実に政策を訴え、地元を回り、しかし「器用に立ち回る」ことができない彼の姿が映し出される。2017年の衆院選で、希望の党設立をめぐるごたごたの際には、「政治家に必要なのは誠意とか筋道とか人徳とかだと思っていたけど、細野(豪志)さんや小池(百合子)さんを見ていると、したたかさだけなのかと無力感に襲われる時がある」。
映画の中で再三繰り返されるのが「政治家に向いていない」という言葉だ。本人からも、家族からも。「私に一番欠けているのは、つきあがるような権力への欲求、欲望。これは政治家として致命的なこと」「党利党益、目先のことに仕えよう、貢献しようと思わないと党で出世できない。そこは僕が正直関心がないところなんですよ」
「政治家になりたい、ではない。ならなきゃ、なんですよ」「やるからにはトップをめざしたい」と初出馬時に語っていた割には、何が何でも政治の道でトップをめざす、という気迫が感じられない。
映画に「泣けた」という感想も多かったが、私には彼が、良い人なのだけど、まるで黄色い帽子をかぶってランドセルを背負っている小学1年生のように思えた。まっすぐな理想を語っても、大人の行動ができない、みたいな感じ。善人は政治家として大成しないのだろうか、とも思った。
山拓さん「お人好しいない」
政治とは、時に汚濁にまみれて人に言えないようなことをしながらも、でもその先にある理想に向かって進むものではないのか。なんかこの人、きれいすぎる――と思ってしまう私は、永田町取材歴20年超で、汚れてしまったのか。
ちょうどそのころ、昔担当していた山崎拓・元自民党副総裁が久々に上京したというので会いに行った。映画を見て、ベテラン政治家に意見を聞いてみたいと思ったからである。
善人だと政治家として大成できませんかね?
私の突然の問いに、彼は即答した。「できない」
「狐(きつね)と狸(たぬき)の化(ば)かし合いだからね。お人好しは1人もいないよ」
善人の政治家は魅力がないですか?
「善人から魅力を感じる人は…
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