「格差是正」求められるFRB 米大統領選の争点にも

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ワシントン=青山直篤
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 景気改善の兆候がみえても、金融引き締めには転じない――。米連邦準備制度理事会(FRB)が8月末に示した新たな指針で掲げたのは、そんなメッセージだ。低金利・低インフレ・低成長の「日本化」が長引くのを防ごうとなりふり構わない姿勢を打ち出すものだが、FRBに新たな役割が求められている潮流も関係している。人種間などの格差の是正だ。

 FRBは8月27日、2012年1月以来続ける「2%」の物価上昇率の目標を「長い時間をかけて平均2%」と修正し、当面は2%をやや上回るインフレを目指すと発表した。この目標が達成できるまで「ゼロ金利」を続ける、とのメッセージで、23年以降も相当の期間、利上げをしない公算が大きい。「今回の修正では『雇用の最大化』という目標が、広範囲にわたる包括的なものだということを強調する」。FRBのパウエル議長はウェブ会見でそう語った。

 世界経済に絶大な影響を及ぼすFRBに対しては、連邦準備法で「雇用の最大化、物価の安定、長期金利の適正化」という目的が明確に定められ、権限の肥大化を防いでいる。パウエル氏が述べた「包括的(インクルーシブ)」とは、人種間などの格差是正を念頭に置く表現だ。「格差という深刻な問題に対してFRBが果たせる最大の役割はおそらく、引き締まった(失業率の低い)労働市場を目指すことだ」。パウエル氏は7月29日の記者会見でも、そう強調した。

 人種問題への対応は11月の米大統領選でも大きな争点となっている。トランプ大統領に挑む民主党候補のバイデン前副大統領は、7月末に発表した政策で「FRBは雇用、賃金、資産における根強い人種間の格差について、積極的に監視を強めていくべきだ」と主張。「議会と協力して連邦準備法を改正し、人種間の経済格差のデータや、是正に向けたFRBの施策について報告させる」と公約した。

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