近大生満たしたキッチンカロリー 創業53年誇りの閉店

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山中由睦
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 大阪府東大阪市の近畿大の近くにある洋食屋が今月末にのれんを下ろす。創業から53年、「薄利多売」がモットーで、学生たちの旺盛な食欲を満たしてきた。高齢で閉店を決めた店主に感謝の気持ちを伝えようと、卒業生らが連日店を訪れている。

 大学西門から50メートルほど。商店街の一角に「キッチンカロリー」はある。壁には五輪メダリストの水泳選手、入江陵介さん(30)のサインや、近大の運動部の記念写真が飾られている。

 店内の換気扇やメニューは黄ばみ、年季を感じさせる。店主の椎林(しいばやし)要治さん(80)は「電気配線もベニヤ張りも全部自分たちでやった。よくもったわ」。

 1967年にオープンした。店名は、大阪市出身の椎林さんが都内の大学卒業後に働いた東京の洋食店と同じだ。独立した時、店主は「恥をかかすなよ」。その言葉を胸に、地元に戻った。近大生が多い東大阪に目をつけ、約30席の店を構えた。

 周辺で洋食屋は珍しかった。戦後、満足に食べられなかった経験から「腹いっぱい食べてほしい」とぎりぎりの価格でボリュームある料理を提供した。

 当初は客が1日数人という時期もあったが、苦しくても自分の信念は曲げなかった。そのうち、水泳やサッカーなどの運動部の学生たちが通うようになった。

 店が忙しくなると、配膳を当時小学生の娘が手伝ってくれた。住む場所がないという学生を夏休み中、自宅に泊めたこともあった。「家族はいろいろ我慢してくれた。感謝しかない」

 半世紀前に100円だったカレーライスは今430円に、130円だったポークカツは550円になった。だいたい4~5倍だ。この間、創業時に65円だったアルバイトの時給が10倍以上に上がっている。「利益は生活できる分だけで十分」と椎林さん。

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