ポリオをアフリカで根絶、WHO宣言 コロナと類似点も

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神田明美
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 人類が天然痘に次いで根絶をめざす感染症ポリオ(小児まひ)について、世界保健機関(WHO)は25日(日本時間26日)、アフリカでの根絶を宣言した。残るのはパキスタンアフガニスタンの2カ国。ワクチン接種の徹底でおさえ込んだ。対策のひとつである感染者の発生の監視は、新型コロナウイルス対策にも通じる部分があると専門家は指摘する。

 ポリオはウイルスが人の便から別の人の口へ入ることで感染。手足にまひが出ることがある。かつて日本でも使われ、途上国でいまも使われる弱毒ウイルスを使った生ワクチンからまれに発生する「ワクチン由来ウイルス」も課題だが、「野生株ウイルス」に感染する患者が3年間発生しないことが「根絶」の条件。

 WHOが世界での根絶を目指すと決めた1988年時点で、患者は125カ国で年35万人と推計された。アフリカはナイジェリアで2016年8月を最後に野生株の患者が確認されていない。日本は1960年に大流行したが、野生株の患者発生は80年が最後だ。

 残るパキスタンとアフガニスタンは武装勢力の支配地域で家庭を回り子どもにワクチンを接種する医療チームの活動が難しく、世界的な根絶には壁もある。医療スタッフが射殺される事件も起き、特にパキスタンでは反米感情やワクチン接種への不信もある。2カ国で、2017年の患者は計22人にまで減ったが、19年はパキスタンで147人、アフガニスタンは29人と急増した。

 ポリオは有効な治療法はないが、ワクチン接種が予防に有効なため、ワクチンが行き届いていなかった国へ、国連児童基金ユニセフ)や日本の国際協力機構(JICA)、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などが、子どもへの接種を支援してきた。

 もう一つの有効な対策は、感染の動向の素早い把握だ。下水や川など環境中のウイルスを監視したり、まひがある子どもがいないか調べたりして、感染者がいる地域を絞り重点的なワクチン接種につなげ、感染の広がりをおさえてきた。

 新型コロナと単純な比較はできないものの、感染動向の把握は「新型コロナに教訓が生かされている」と、国内外でポリオ対策に携わった川崎医科大学の中野貴司教授は言う。

 「ポリオは数百人が感染してまひが出るのは1人という病気で、隠れた感染者を探すことが重要。新型コロナウイルスも無症状感染者がとても多い病気で、隠れた感染者を探すという点でまさに新型コロナも同じ」

 監視の方法も、ポリオと新型コロナでまったく同じではないが、新型コロナで無症状でも感染の疑いがある人にPCR検査をしたり、発熱や呼吸器の症状など特徴的な症状から感染者を見つけ出したりする点で似通うと指摘する。

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