第5回「ひとり親」へ妥協なし 稲田朋美は幹部を待ち伏せた

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編集委員・秋山訓子
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 女性議員たちとともに未婚の寡婦(夫)控除実現の旗を振った自民党幹事長代行、稲田朋美選択的夫婦別姓に理解を示すなど、最近、従来の保守的な姿からウィングを広げる様子が目立つ。この夏、取材に足を運んで「なぜですか? いわゆる伝統的家族観の持ち主だったのではないですか」と聞くと、稲田は次のような話を始めた。

 「変わったのは3年くらい前かな、防衛相を辞めてから。あのとき、批判されて本当につらくて落ち込んで……」

 首相である安倍晋三の「秘蔵っ子」として要職に起用され続けてきた稲田がつまずいたのは、2017年。自衛隊の「日報隠し」問題の責任を取って防衛相を辞任した。日の当たる場所から転落してみて気がついたことがあったという。

 「差別とか公平じゃないことに対して怒りを感じるようになって。伝統的家族を守るために、はみだした人を差別するのはおかしい」。稲田はそう語った。

 その心境の変化の先に、未婚のひとり親が置かれた境遇への共感があった。そして19年6月、事態は動き始める。

シングルマザーと永田町 女たちの税制革命

今年の年末調整から、「未婚の寡婦(夫)控除」が実現します。背景には市民団体と国会議員がタッグを組んだ女性たちの取り組みがありました。彼女たちがどう動き、税調幹部や財務省がどう動かされていったのか。7回連載でお伝えします。今回は第5回です。

    ◇

 未婚の寡婦控除実現を訴えるNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」理事長の赤石千衣子が稲田のもとを訪れた。子ども食堂をきっかけに知り合った衆院議員、木村弥生の紹介だった。稲田はすぐに支援を約束。木村の助言で赤石が全国組織を立ち上げると、「税の季節」である冬を待った。

「税は感情で考えるものではない」

 稲田はその間、木村をはじめ女性議員の「同志」を集めた。尾身朝子、松川るいといった衆参の国会議員が合流した。彼女たちは、官房長官菅義偉ら有力者に次々と要請し始めた。

 そして迎えた12月4日。議員が平場で意見を言い合う党税制調査会小委員会の会議。稲田たちは会議室内に固まって座って次々と手を挙げ、未婚の寡婦控除を求める発言をした。

 だが、前方の「ひな壇」に座…

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