「癒やし」なきリニア 前時代の遺物か世界変える技術か

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聞き手・矢吹孝文
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 リニア中央新幹線の静岡工区が未着工になっている問題で、品川―名古屋間の2027年開業が困難になった。静岡県JR東海の対立をめぐっては、早期の開通に期待する声と、「工事は拙速」との慎重論がぶつかる。「夢の超特急」を取り巻く議論を、どう読み解けばいいのか。政治学者で放送大教授の原武史さんと鉄道アナリストの川島令三さんに聞いた。

原武史さん「かえって不便になることも」

 私は鉄道ファンだが、リニア建設には最初から反対だ。東海道新幹線は右肩上がりの時代につくられ、世の中の流れにマッチしていたが、少子高齢化の今は完全に時代が違う。リニアは前時代の遺物だ。

 新型コロナウイルスの流行で「東京に出ず、在宅で働く」ことが推奨された。それなのに、リニアがアピールするのは「東京まで早く行ける」という一極集中の発想だ。首都圏から近くなれば、地方の人や資本が吸い取られる「ストロー効果」だって起きる。最短40分でつながる名古屋は、「東京の郊外」になりたいのだろうか。

 日経新聞の記者だった1987年、宮崎県にあったリニア実験線を取材した。石原慎太郎運輸相の視察に同行して試乗すると「ふわっ」と浮く感じで、飛行機の離陸に似ていた。速度は時速500キロくらい。発足直後だったJR東海の職員の表情は野望にあふれ、ほこらしげだった。

「リニアは前時代の遺物」と話す原さんは、その理由を次々と挙げていきます。一方の川島さんは「これ以上便利になる必要はない」といった反対論を「間違い」と言い切ります。鉄道を愛する2人の主張は交わらないのでしょうか。

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