風化する「パレスチナの大義」 政治カードへの悪用も

有料記事

小森保良
[PR]

 「パレスチナの大義」という言葉がある。土地を奪われたパレスチナ人の権利は当然回復されるべきだし、国を持つ正当な権利がある、という主張だ。パレスチナのことを語る時、アラブの人々はかつて、きまってこの言葉を使った。アラブ各国の指導者たちも、しばしば口にし、同胞としてのパレスチナへの連帯も呼びかけた。そこには、パレスチナの大義のために力を尽くすことは、政権の正統性をアピールすることにもつながるという思惑もあった。しかし今、状況は大きく変わっている。

 それをあらためて強く実感したのは2019年のことだ。パレスチナの人々がガザ地区とともに独立後の国土と考えているヨルダン川西岸の入植地の一部を併合する考えを、イスラエルのネタニヤフ首相が明らかにした。パレスチナの大義という言葉がアラブの日常にあふれていたころだったら、大規模なデモなど抗議行動は各地で頻発しただろうし、各指導者たちもイスラエル非難の声を強く上げたに違いない。

ここから続き

■国交正常化への合意、「抗議…

この記事は有料記事です。残り1272文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら