神奈川)プレミアム付き商品券、自治体で明暗

大平要 豊平森
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 コロナ禍を受けた地域の経済対策で、「プレミアム(お得分)付き商品券」の発行が相次いでいる。プレミアム率(商品券の購入金額に対するお得分の割合)の高さなどをアピールしているが、販売に苦戦する自治体もあり、売れ行きはばらついている。何が明暗を分けているのか。

 神奈川県海老名市は、プレミアム付き商品券の発行を、当初予定の28万冊から約7万冊増やすことを決めた。期間中の申し込みが予定冊数を上回り、全員購入できるようにするためだ。

 商品券は1冊3500円。5千円分の買い物などに利用でき、プレミアム率は約43%と高い。内野優市長は、申し込みが好調だった理由として職員手作りの申込書付きのチラシを全世帯に配布したことをあげ、「業者への丸投げではなく、自分たちでやった」と職員をねぎらった。増刷にかかる費用は、補正予算を組んで対応した。

 一方で、川崎市は当初の申込期間(6月12日~7月3日)では約26万冊で、予定していた87万冊の3割にとどまった。1冊1万円(利用額1万3千円、プレミアム率30%)だが、人口あたりの販売額は海老名市に遠く及ばない。

 川崎市が7月17日から8月13日まで実施した2次募集では、1次募集で上限の5冊を購入した人も、2次募集ではさらに5冊まで購入できるように規定を変更。街にブースを構え、プレミアム率の高さや、商品券のために書き下ろしてもらった「ドラえもん」のデザインをアピールした。

 だが、2次募集を合わせても、申し込みは計46万5千冊ほど。税金投入分を含め113億円を見込んだ経済効果は、このままでは得られそうになく、さらに追加募集を検討中だ。

 違いはどこにあるのか。

 川崎が千円券13枚つづりなのに対し、海老名は500円券6枚、200円券10枚と、細かく分かれている。お釣りがもらえないことを考えると、海老名の方が使いやすい。

 また、海老名の500円券は量販店でも使える。200円券は店舗面積500平方メートル未満の小規模店でしか使えないが、利用店舗を地元の中小事業者に絞った川崎とは異なる。海老名市の担当者は「店の支援と同時に、市民の『生活支援』の側面もある。その意味で使いやすさを重視している」と話す。

 一方で川崎市は、「若干の余裕がある方に、何とか地域経済を支えてもらいたい」(福田紀彦市長)というように、「地元での消費の喚起」の狙いが前面に出る。2015年に発行した商品券は約7割が大型スーパーや量販店などで使われたが、これでは地元に落ちるお金は限られる。今回は、確実に地元の店に使われるように、商品券を使える店を「市内の中小事業者」に限定した。

 日本総研マクロ経済研究センターの石川智久所長は商品券による地元での消費の喚起について、「コロナ禍によるダメージは、小売りや外食など特定業種に集中するので、方向性は合っている」と評価する。ただ、「(感染拡大の)恐怖心があるうちは、外出を控えてしまうので、消費喚起策はうまくいかない。タイミングが悪い」とも指摘する。販売に苦戦する場合は「地域のために使って欲しいと訴えつつ、場合によっては感染が落ち着くまで延期する手もある」と話す。(大平要、豊平森)

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