子グマを生け捕り脳みそを…アイヌの儀式、伝統でも葛藤

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高田誠
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 北海道釧路市の阿寒湖温泉地区で8月、アイヌ民族の案内でアイヌ文化を体感するツアーが始まった。「自然と共生する」「固有の文化を大切に」というフレーズは耳に優しい。だがモニターツアーに参加すると、継承を口にしにくい「野蛮」とも言われた儀式についても語られた。

 ツアーは、阿寒アイヌ工芸協同組合が企画した「Anytime,Ainutime!」。このうち森を散策するコースのモニターツアーが7月末にあり、ホテル従業員や森林関係者ら約20人が参加した。

 阿寒アイヌ協会の広野洋さん(55)や瀧口健吾さん(38)ら案内人は、カムイノミ(神への祈り)からガイドを始めた。

 カムイ(神)が宿るとされるハルニレの大木を前に、乾かしたサケ、穀類、刻みたばこなどを供えた。両手をゆっくりとすり合わせ、左右に振る独特のしぐさを繰り返す。「道中の安全を見守ってください」。うたうようにアイヌ語で祈りを捧げた。

 カムイと人間を仲介する祭具のイナウ(木幣)やイクパスイ(酒を捧げる箸)となるヤナギの木、「黒髪の踊り」が嵐に揺れる枝葉を表現するトドマツ、コロボックル(小人)の伝承……。瀧口さんは先が二またに分かれた杖を手に森を進み、エカシ(長老)や周りから聞いた話、自分の体験を参加者に語りかけた。

 クマザザの甘いお茶を振る舞い、アイヌ語のユーカラ(叙事詩)も披露した。参加者は満足そうだ。

 だが、瀧口さんが熊の前脚の鋭いツメを見せ、アイヌ民族の最大とされる儀式について話を始めると参加者の笑顔が消えた。かつておこなわれていた「イオマンテ」(熊送り)である。

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 冬の終わり、穴の中で冬眠し…

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