こけしはごおっと燃えた あまんきみこ初めて描く旧満州

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聞き手・伊藤良渓
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 「ちいちゃんのかげおくり」などの作品で知られる児童文学者あまんきみこさん(89)は今夏、初めて旧満州・大連での自らの戦争体験をテーマにした絵本「あるひあるとき」を出版しました。「ずっと重たかった体験」に正面から向き合った今、思うことは――。

ハッコちゃんが燃えた

 子どもだった私の日常には戦争がありました。私は中国東北部(旧満州)で生まれ、9歳から大連で過ごしました。南満州鉄道株式会社の関連会社で働いていた父、母と祖父母と暮らしていました。

 あの頃、私の親友だったのは、父がお土産に買ってきてくれたこけしの「ハッコちゃん」でした。彼女の頭をごろんごろんと手のひらに感じながら、たくさんかわいがりました。

 しかし1945年に日本が敗戦すると、大連はソ連軍の占領下に置かれました。当時は20万人の日本人が住んでいました。町では危ないことがたくさん起きて、ひとりでは外出できなくなり、私は家でハッコちゃんと遊んでいました。ソ連兵たちが家に侵入してきた時は、母たちと2階のベランダから屋根の上をはって逃げ、煙突の陰に隠れたこともありました。

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 大連の冬は零下10度になり…

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