7カ月の娘も、夫も母も一夜で失った 絵本が伝える惨禍

有料記事戦後75年特集

編集委員・清川卓史
[PR]

 75年前、空襲で火の海となった東京を幼い娘を背負って逃げ惑い、その娘と夫、実の母を一夜にして失った女性がいる。戦後は戦争孤児たちの施設で働き、「お母さん」と呼ばれた。その生涯が絵本になった。描いたのは、同じ空襲で父母を奪われた戦争孤児だ。

 絵本のタイトルは「娘と眺めた月」。主人公は鎌田十六(とむ)さん(107)。東京都内の特別養護老人ホームで暮らしている。

 1945(昭和20)年3月10日未明に始まった東京大空襲。当時32歳、現在の東京都台東区に一家で住んでいた。体験記などによれば、7カ月の娘・早苗ちゃんを鎌田さんが背負い、夫の茂さんが鎌田さんの母うめさんの手を引き、4人で隅田川沿いへ逃げた。

 猛火に追われ、鎌田さんは川に落ちた。刃物のような冷たさ。早苗ちゃんの泣き声も次第にかぼそくなっていった。夜が明けようとする頃、誰かがおろしてくれたはしごで川からはいあがった。

ここから続き

 たどり着いた避難先の学校で…

この記事は有料記事です。残り1077文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

戦後75年特集

戦後75年特集

2020年は終戦75年の節目です。あの時のことを語れる人は減ってきています。まだ、間に合います。戦争を知る人々からのバトン、受け取りませんか。[もっと見る]