東京の医療は逼迫(ひっぱく)していないというのは誤りだ――。杏林大病院(東京都三鷹市)の山口芳裕・高度救命救急センター長は7月22日、新型コロナウイルスの感染状況などを分析する東京都の会議でそう訴えた。ちょうどこの日、「Go To トラベル」事業がスタート。「第1波」に比べ、医療体制に余裕があると強調する政府に疑問を呈した。発言の裏にどんな思いがあったのか、話を聞いた。

 「逼迫していない」との発言をテレビのニュースで聞いたのは、会議の前日でした。安倍晋三首相は自民党の役員会で、菅義偉官房長官は定例記者会見で相次いでそう言っていました。違和感がありました。

 いま東京の入院者は約1500人。確保している病床は2400床。入院中の重症者は20人以上。数字だけ見れば「余裕があるじゃないか」と思うかもしれません。でも数字では見えない現場の負荷があります。

 杏林大病院でも、7月後半から感染者の入院や、感染が疑われて救急搬送されてくる「疑い患者」が増えてきました。そのたびに救命救急センターでは、(高性能な)N95マスクやガウン、手袋などフル装備で対応します。診断結果が出るまでの間、疑い患者は病院が感染者用に準備している陰圧室に入ります。

 感染者用の病床を増やすのは簡…

この記事は有料記事です。残り1429文字
ベーシックコース会員は会員記事が月50本まで読めます
続きを読む
現在までの記事閲覧数はお客様サポートで確認できます
この記事は有料記事です。残り1429文字有料会員になると続きをお読みいただけます。
この記事は有料記事です。残り1429文字有料会員になると続きをお読みいただけます。