「好き」の思い大切に 鴻上尚史さんに聞く特攻とコロナ

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聞き手・太田啓之
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 「敵艦に体当たりしてこい」という上官の命令に逆らい、9回特攻出撃して9回とも生還した陸軍パイロットだった故佐々木友次(ともじ)さんの戦いを描いたノンフィクション『不死身の特攻兵』。著者の鴻上尚史さんによれば、佐々木さんの戦時下での生き様は、新型コロナウイルス禍で世間に蔓延(まんえん)する「同調圧力」に私たちがどう立ち向かうか、貴重な示唆を与えてくれるという。佐々木さんはなぜ、軍隊というブラック組織の中で、「特攻で日本のために命を捧げるのが正義」という同調圧力に抗することができたのか。鴻上さんに聞いた。

――鴻上さんはなぜ、「特攻」に強い関心を持つようになったのですか。

 「少年時代、漫画や雑誌でアジア・太平洋戦争のことがよく取り上げられていましたが、子ども心にも『特攻』という作戦が理解できませんでした。普通に考えるならば、体当たりして1回で攻撃を終わらせるよりも、生きて帰って何度も出撃する方が絶対いいはずなのに、とずっと疑問に思い続けてきたんです。だから、あとになって、佐々木さんが体当たりを拒否して爆弾を自らの技量で敵艦に命中させ、生還していたこと、ベテランパイロットたちは特攻の命令を激しい屈辱と感じていたことを知り、納得しました。『なるほど、それはそうだなあ』と思いました」

 「佐々木さんについては、最初は本にすることは考えていなくて、『とにかく会ってみたい』という思いが強かった。2015年、知人のテレビ局プロデューサーを通じて佐々木さんが存命していることを知りました。入院中だった佐々木さんに何度か話をうかがっているうちに、『佐々木さんの存在を多くの日本人に知ってもらいたい』と思うようになりました」

――それは、なぜだったのでしょうか。

命を消費する日本型社会とは

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 「『不死身の特攻兵』が世に…

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