糖尿病患者の「シックデイ」とは? 命に関わることも

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 糖尿病の患者が風邪など他の病気にかかると、血糖のコントロールがうまくいかず、急激に体調が変わることがある。「シックデイ」(体調が悪い日)と呼ばれる状態だ。かかりつけ医とあらかじめよく相談して対応を考えておく必要がある。

血糖コントロール難しく

 シックデイは糖尿病患者が、風邪や胃腸障害などで、熱や下痢、吐き気があり、食欲がなく食事がとれないような状態だ。普通はすぐに治るような症状でも、急激に体調が悪化して入院が必要になったり、命にかかわる状態になったりすることがあるので注意が必要だ。

 京都大の稲垣暢也教授によると、熱や痛みによって、ストレスにかかわるホルモンが分泌される。その影響で、血液中のブドウ糖を細胞に取り込む「インスリン」が足りない状態になる。

 インスリンが極端に不足すると高血糖になる。さらに、細胞に取り込まれる糖が足りなくなり、エネルギー不足を補うために脂肪が分解され、酸性の「ケトン体」が血液中に増える。血液が酸性に傾くと、吐き気や腹痛が起こる。 食欲がなくなると、ますますエネルギーが不足し、ケトン体が増える。重症の場合、「糖尿病性ケトアシドーシス」と呼ばれる状態になり、意識障害や昏睡(こんすい)に陥ることがある。体内でインスリンが作れない1型糖尿病患者はとくに注意が必要だ。

 下痢や吐き気などで脱水症状になると、高血糖になり、脱水が進む悪循環が起こり、「高浸透圧高血糖症候群」と呼ばれる状態で、昏睡に陥ることもある。脱水を起こしやすい高齢者は気をつけなければならないという。

 一方、食事がとれなくて、血糖が下がっている状態で、さらに血糖を下げる薬を使うと、血糖値が低くなりすぎて、意識障害や昏睡になる危険もある。

 稲垣教授は「高血糖になるだけでなく、薬の使い方によっては低血糖にもなる可能性もあり、いずれも危険。とくに1型糖尿病の人は、自己判断でインスリンの使用を中止しないでください」と話す。

 福岡市で糖尿病専門クリニックを開く南昌江(みなみまさえ)医師も「命にかかわることなので、体調が悪い時は、すぐ主治医に連絡してください」と話す。

 糖尿病のタイプ、重症度、使っている薬は患者によりさまざまだ。体調悪化の原因、食事がどれくらいとれているかなどでも対応法は違う。食べられない時に薬をどうするかなど、あらかじめ相談しておくことは必要だが、状況に応じて対応は変わる。状態を説明して、相談したほうがいいという。

 シックデイで、合併症が悪化することもある。名古屋大の安田宜成(よしなり)准教授は「たとえば糖尿病に加えて慢性腎臓病があると、脱水で腎臓の働きが急激に悪くなることがある。腎臓の働きが悪くなると、副作用が起こりやすくなり、薬によっては中止する必要がある。医師や薬剤師に相談してください」と言う。

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