第5回コロナで広がるキャリア不安 乗り越える思考法を聞いた

有料記事今こそ聞きたいDX

笠原真
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 「コロナで失われる仕事」「コロナ失業」「コロナで大量解雇」……。ここ数カ月、雑誌やインターネットでこのような見出しが躍るようになった。新型コロナウイルスの感染拡大は働く環境に劇的な変化をもたらしており、今後のキャリアについて考え直す人も少なくないと思う。

 私(30)は転職経験者だ。前職はビールメーカーで3年間、営業をしていた。だが、学生時代から抱いていた「世界を自分の目で見たい」という思いが冷めず、国際記者をめざして転職を決意。4年前、朝日新聞の記者になった。

 でもせっかく転職したのに、長引くコロナ禍の影響で朝日新聞がなくなったらどうしよう。この先、ちゃんと食べていけるだろうか。正直に言うと、そんな不安を覚える日々が続いている。

 路頭に迷わないように、私たち30代はどんなキャリア観を持って、どう行動していけばいいのだろうか。「プロティアン(変幻自在な)・キャリア」という概念を日本で提唱してきた法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授(社会学)にアドバイスをもらおうと思い、会いに行った。

たなか・けんのすけ 法政大学キャリアデザイン学部教授。専門はキャリア論。一般社団法人プロティアン・キャリア協会代表理事。国内外の貧困地域などで実地調査も行い、著書に米国の日雇い労働者に密着した「ルポ 不法移民 アメリカ国境を越えた男たち」(岩波新書)などがある。

崩れた「美徳」

 田中さんによると、「プロティアン」の語源は、ギリシャ神話の神であるプロテウス。プロテウスは姿を変幻自在に変えられることから、プロティアン・キャリアとは「社会や環境の変化に応じて、自らのキャリアも柔軟に変えていけること」を意味する。

 田中さんは、日本では高度経済成長を支えてきた終身雇用などの雇用制度が制度疲労を起こし、新型コロナが追い打ちをかけたと指摘する。「企業の体力が落ち、一つの組織に自分のキャリアをゆだねることはリスクになった。これまでは一つの企業内での昇進だけを考えればよかったが、今後は自ら主体的に考え、会社などの組織は『キャリアを形成していく場所』と捉えることが重要になってくる」

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