第10回世に出なかったアプリ 全力疾走で手元に残ったものは?

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宮地ゆう グラフィック・福宮千秋
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シビックテック コロナに挑んだ3カ月⑩

 東京都文京区に、やや変わった弁護士事務所がある。ビルには事務所とともに、社会起業家のためのシェアオフィスが入る。弁護士の小野田峻(37)らが2016年に開設した。小野田はシェアオフィスを利用するベンチャー約20社の創業支援などもしている。

 小野田は、社会起業家や、「コード・フォー・ジャパン(CfJ)」の活動を支えることで、「官と民のパワーバランス」を変えようとしている。

 小野田は11年、司法修習をしていた盛岡市東日本大震災を経験した。その後、被災者の救済や被災地の復興に関わるうち、行政や法律が硬直化した現場を嫌というほど見た。

 被災地では保障や救済の窓口がどこかもわかりにくく、現場の実情に合わない法律が放置されている。しかも、使えない法律を変えるには、何年もかかる。

 これは、法律を作る人と使う人の隔たりが大きく、行政が持つ権力に対して、市民の力が弱すぎるからではないだろうか。「日本には政治、経済、社会の仕組みは、特別な人しか決められないという思い込みがある。そこから脱して、市民の力でもう一度行政や立法との関係を作り直すべきだと考えた」

 だが、肥大化した行政に対し、市民の力を増すことは容易ではない。ならば、行政の取り組みについて批判するのではなく、市民自ら解決すべき課題を見つけ、自分たちで解決法を提案することから始めたらどうか。

 新型コロナウイルスの感染拡大で根底から生活が変わるなか、互いに知らず、年齢も職業も住む場所も違う人たちがネット上で協力し、自らの技術をコロナ対策に役立てようとする活動が広がった。ITを使い、社会課題を自ら解決していく活動「シビックテック」だ。共に取り組んだのは東京都と国レベルのプロジェクト。走り続けた彼らの3カ月を全10回で報告する。

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 14年、小野田はCfJ代表…

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