開催なら景気浮揚、中止だと収入ゼロも…気をもむ経済界

有料記事聖火は照らす

橋田正城
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 例年と様変わりした光景が、東京・平和島の一角に広がっている。はとバス本社の駐車場だ。いつもは車両の出入りが激しいが、今年は隙間なく100台余りが待機中で人気(ひとけ)もない。

 「本来なら、今年はオリパラ関連のバス事業で1億5千万円が入るはずだった」。石川祐成取締役経営本部長が明かした。東京五輪パラリンピックの会期中は毎日、大会運営のためにバス25台が使われる予定だったが、1年延期で、見込んでいたお金が今年は入らなくなった。

 コロナ禍で観光需要は蒸発した。3月中旬、観光バスの立ち寄り先に閉鎖などが出始め、乗務員を自宅待機にした。ツアー実施が難しくなったからだ。緊急事態宣言翌日の4月8日からは観光バス事業がほぼ止まった。平時では都内観光が会社の売り上げの約3割を占めるが、4月の利用者(日本語コース)は前年比0・1%、5月はゼロ、6月は同2・6%。経営するホテルも大会関係者、旅行会社などの予約(約1万2千室)が入っていたが、約2億6千万円が吹っ飛んだ。

 別のホテルチェーンも今夏、五輪関連で十数億円が消えた。幹部は「先が見通せない」。感染状況によって宿泊動向が日ごとに左右されるという。外国人客が戻る見通しもたたず、日本旅行業協会によると、2~8月の主要旅行業者の総取扱額(推計)は前年より約2兆5千億円減る。坂巻伸昭会長は「旅行業の一番の目的である人を動かすことができなくなった。経験したことのない数値になっている」。今年の国内旅行消費額は推計で前年より約20兆円超減ると見込む。

 東京五輪は来年7月23日開幕と決まった。期間中、どの程度の客室をどのホテルで確保するのかを詰める必要がある。各社は大会組織委員会と調整するが、大会が簡素化されれば、今夏の見通しより少ない収入しか得られない。ビジネスの性質上、キャンセル料を織り込む契約は難しいとされ、中止になれば収入すべてが消失しかねない。はとバスの石川さんは「日銭を稼ぐ事業が動き出さないと厳しい。1年後の五輪を考える余裕がない。白紙だ」。苦境にあえぐ企業は、現状の暗さ、先行きの不透明さから来夏の開催を懐疑的に見る。

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