首相は「不誠実」の演出家 五輪、森友…コロナで「裸」

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多事奏論・高橋純子(編集委員)

 今年、スケジュール帳に添える筆記具を「こすると消える」ペンに変えた。特段の意図はなかったのだが、3月以降、とても重宝した。4月の仙台、5月の広島、6月の長野に福岡、8月の北九州……すべて消しきってから、後悔した。記録として残しておけばよかった。何が予定されていて、いつどうキャンセルになったのか、あとで見返した時になんらかの記憶を呼び起こすフックにはなり得たかもしれない。

 良くも悪くも、人は忘れる。東日本大震災のあと数年間をかけて、私はつくづく実感したのだった。あのとき、多くの人たちが、「変わらなければ」と確かに思った。脱原発の集会やデモには万単位の人が集まった。自分たちが享受してきた便利な生活を見直し、文明を問い直そうという議論がさまざまに、活発になされた。

 だが、簡単に答えが出ない問題を、踏みとどまって考え続けるには知的にも精神的にも体力がいる。記憶が薄れればどうしたって現状維持に傾くし、まじめに考え続けてやきもきしている自分はなんだか損しているようにも感じられてくる。

 ああ、疲れた。

 そんな「厭戦(えんせん)気分」ならぬ「厭考気分」にうまく乗じたのが、安倍政権だったと私は思っている。

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 「この道しかない」と力強く…

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