京アニ聖地の民宿、ファンに寄り添う「娘のような存在」

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矢田文
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 2013年8月、鳥取県岩美町で民宿「ビーチインたけそう」を営む武田智一さん(60)は見慣れない光景に首をかしげた。海水浴シーズンは終わったというのに民宿前の浜辺で若い女性が写真を撮って歩いている。それも1日だけじゃない。気になって、あるグループに聞いてみると「フリーです」と言う。「なんだそれ」。「アニメです。京アニの」

 「Free!」は、岩鳶(いわとび)町という架空の世界を舞台に、水泳に打ち込む少年たちの青春を描いた京都アニメーション(本社・京都府宇治市)の人気シリーズ。13年7月にテレビ放映され、作中には岩美町の田後(たじり)港やJR岩美駅などによく似た風景が数多く描かれている。

 これまで、夏が終わると松葉ガニのシーズンが到来する冬までは閑散とする町だったが、9月に入ると武田さんの民宿も作品の「聖地巡礼」をするファンでいっぱいになった。

 地元の観光協会長でもある武田さん。アニメを新たな町の魅力として受け入れることに抵抗はなかった。遠くから来てくれる若いファンのため、低価格な「Free!プラン」を作り歓迎した。次第に民宿の壁はファンがいつの間にか残していった写真やグッズで一面飾られるようになった。

 毎晩、日付が変わるまで宿泊するファンらと作品について語り合った。気が付けばファンから「パパ」と親しまれ、婚姻届の証人を頼まれたこともあった。今では600人を超えるファンとLINEでやりとりする。「なんだか若返った気がする。京アニのおかげだな」

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 昨年7月18日、いつものよ…

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