濁流から私を救い、夫は力尽きた 思い出す「赤い糸」

有料記事九州豪雨

板倉大地 小松万希子
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 熊本県南部の球磨(くま)川流域を中心とした九州の記録的な豪雨災害は、63人の命を奪った。その中には、妻を助けた後、濁流にのまれて亡くなった男性がいた。豪雨に見舞われた日から11日で1週間になる。

 熊本県人吉市下薩摩瀬町の井上節子さん(77)は10日、寺で夫の三郎さん(81)の初七日を営んだ。遺影と遺骨を前に、そっと手を合わせた。

 4日午前8時半ごろ、自宅周辺に豪雨が降り注ぎ、水が道路にあふれた。「お父さん、逃げよう」「わかった、わかった」。節子さんと三郎さんはリュックに荷物を詰めこんだ。庭に出ると、水は腰の高さまで来ていた。

 垣根に囲まれた庭から道路に出た節子さんは、激しい水の流れに足を取られた。数メートル流され、垣根にしがみついた。向かいに住む魚住光二さん(70)がビニールひもを投げてくれた。魚住さんは、三郎さんが節子さんに近づき、右手で抱きかかえるのを見た。

 三郎さんは、節子さんの腕にひもを巻き付け、魚住さんの方へと押し出した。節子さんは助かり、ひもがもう一度三郎さんへと投げられた。

後ろ向きに倒れ、流れにのまれた

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 「頑張れ! お父さん、頑張…

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