経世彩民 和気真也の目
「歯が痛い」と妻が言い出したのは、英国が「ロックダウン(都市封鎖)」を始めてまもない3月下旬のことだった。近くの歯科医院に電話したが、返ってきたのは録音された音声メッセージ。「新型コロナウイルスのため、全ての治療を見合わせています」
もう1軒、さらに1軒。うーむ、つながらない。ロックダウンってそういうこと?
ようやく対応してくれる歯科医院を見つけ、すがる思いで駆け込んだ。虫歯が見つかったが、歯科医のアリさんは「今はドリルが一切使えない」という。選択肢は二つ。抜歯か、抗生剤で痛みを鎮めるか。
悩む妻を見て、アリ医師は言った。「正直、大した虫歯ではなく、抜くのは忍びない。抗生剤で様子を見て、数週間後にロックダウンが終われば治療したらよい」
妻は助言に従った。しかし、アリ医師の予想は外れた。ロックダウンは一向に解除されず、妻は1カ月後に結局、歯を抜いた。
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7月4日、英国はロックダウ…
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