学園から謎の「3万円支給します」 富豪村の珍しい遺産

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滝坪潤一 青瀬健
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 神戸市東灘区の住吉地区で6月、「全世帯に3万円ずつ支給します」というお知らせ文が配られた。差出人は「一般財団法人 住吉学園」。新型コロナウイルス対策の支援金として地区全世帯に配るのだという。突然のことに「新手の詐欺では」と戸惑う住民もいたが、実はこれ、かつて「日本一の富豪村」と呼ばれた地区の歴史と深く関わる取り組みだった。

 「なんだろう、これ」

 6月中旬、東灘区の住吉川にほど近いマンションの一室で、住人の無職北村裕史さん(68)は郵便受けに届いた水色の封筒をしげしげと眺めた。ほどよく自然が残る環境が気に入り、15年ほど前に大阪市内から引っ越してきた。封筒の宛先は「住吉在住の皆様へ」。

 中をみると、地区全世帯への一律3万円支給のお知らせ。びっくりした。必要な手続きは、申請書に振込先の口座番号を記入し、住所確認書類の写しを添えて郵送するだけだった。「何かと先行き不安な世の中。ありがたく申請しました」

 住吉川沿いの平地から六甲山麓(さんろく)まで広がる住吉地区には現在、約1万9千世帯が暮らす。全世帯に3万円を配れば5億7千万円ほどになる計算だ。それほどの財力をもつ住吉学園とは、一体どんな組織なのか。

古い住民たちが親しみを込めて呼ぶ「学園さん」。歩んできた歴史をたどると意外な事実が見えてきました。現在の理事長が込める思いも後半で紹介します。

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 住吉学園は戦前、旧住吉村(…

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