ドイツが7月1日から半年間の期限付きで、日本の消費税に当たる付加価値税を引き下げた。新型コロナウイルスの影響で落ち込んだ景気をテコ入れする対策の一環だ。消費者の購買意欲が上向くかが焦点だが、小売店からは賛否の声が出ている。(ベルリン=野島淳)
ベルリン中心部にある家具店員のスマイン・ケミケムさん(50)は「減税に魅力を感じている顧客は多い」と話す。
3月から全商品15%割引で売り始めていたところで、行動制限の影響で約1カ月半の閉店を余儀なくされた。日本円換算で40万円以上するソファなど、値が張る商品が多いだけに、減税分の効果はばかにならない。「買い控えていた顧客の意欲がわくのでは。1月以降も減税を続けて欲しい」と望む。
付加価値税の引き下げは標準税率で19%から16%で、食料品や書籍などに適用される軽減税率も、7%から5%に下がる。
ベルリン市内のショッピングモールでは、コロナ禍でたまった在庫をはき出すため、値引きセールが始まり、「25%オフ」などのポスターが至る所に貼ってある。市場調査会社GfKによる消費者の景況感調査によると、購買意欲は4月を底に上向きとなっており、今後も付加価値減税の効果が期待できるという。問題は小売店が減税分をきちんと価格に反映するかだ。
ドイツは内税方式で、店頭価格は税込みの総額で表示する。各店舗は短期間で値札の張り替えやレジシステムの変更などが必要だ。しかも、減税期間が終わる半年後には、また元に戻さなければならない。
小売り大手各社は減税に合わせて表示価格を変更するとしている。スーパーマーケット各社は、減税分を価格に反映する方針を表明。大手家電量販店のザトゥアンは、本社から各店舗の値段の表示を一元管理しているといい、「減税分は価格に反映する予定だ」(広報担当者)という。
かさむ手間 悩む小規模店
一方、小規模店舗の負担は重い。政府は値札は必ずしも変える必要はなく、割引などで対応しても良いとの方針も示す。
だが、ベルリンで書店を経営するユリア・ハッカーさんは「付加価値税下げは本当にばかげている」とこぼす。書籍の場合、印刷された値段は短期間で変わらないため、レジで減税後の5%の税率を適用する。一方で、絵はがきなどの雑貨は19%に据え置くという。手間がかさむためだ。「お客さんには説明して理解してもらうしかない」と話す。
アクセサリー店を営む女性(…
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