ネット政治広告、規制は 米大統領選で「詐欺的行為」も

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守真弓 宮田裕介
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 英国の欧州連合(EU)離脱や米大統領選の結果に大きな影響を与えたとされるネット上の政治広告。日本でも、憲法改正の手続きを定める国民投票法改正が議論される中で、こうしたネット広告の規制についての議論がついに始まった。規制は必要なのか。可能なのか。

 「インターネット広告は今や放送広告の量を凌駕(りょうが)し、扇情的な影響力という意味でははるかに強い影響力を持っている」

 5月、憲法改正を議論する衆院憲法審査会が半年ぶりに開かれた際、委員の一人はこう訴えた。これまではテレビのCMについての議論が中心だったが、この日はほとんど議題に上がらず、代わりに多くの議員が言及したのは、ネット広告の規制についてだった。

ネットの広告費、テレビを上回る

 背景にあるのはメディア環境の激変だ。広告大手の電通によると、昨年の国内の総広告費は6兆9381億円だったが、そのうちネット広告は2兆1048億円で、1兆8612億円のテレビ広告費を初めて抜いた。新聞広告費は2009年にすでに抜かれている。

 だが、現行の国民投票法では、ネットについての記載はなく、投票前14日間のテレビ・ラジオ広告を除いて原則無制限。審査会では、ネット上の政治広告だけではなく、フェイクニュースや誹謗(ひぼう)、中傷を規制する法律の必要を指摘する声もあがり、議論は始まったばかりだ。

 憲法改正派の委員の間には、ネット広告の議論を本格化させれば憲法改正手続きが遅れるとのいらだちもある。「CM規制などについては(大型商業施設への共通投票所設置などを定めた)7項目の改正案を成立させた後に、速やかに議論を開始すべきだ」。自民党岩屋毅議員はこう述べ、広告規制の議論は後回しにするべきだの考えを示した。

 ネット広告にはどのような特異性があるのか。

 政治とメディアの関係に詳しい東京工業大の西田亮介准教授は、「ネット上広告は写真や動画などビジュアルに訴えかけるものが多く、多様な情報を冷静に考えるためというよりは、脊髄(せきずい)反射を生みやすい」と指摘する。

米大統領選では「詐欺的行為」

 また、ネット広告はテレビCMよりも巧妙に、人の無意識までも操作する危険性が指摘されている。

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