富山)この経験大きな糧に バドミントン大堀選手

野田佑介
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 新型コロナウイルスは一時アスリートのパフォーマンスの場を奪った。でも富山県高岡市在住のバドミントン選手、大堀彩さん(23歳、トナミ運輸)は、この経験は次のステップへの大きな糧になると語り、子どもたちにエールを送る。東日本大震災で不安に向き合いながらプレーを続けた体験がそうさせるのだ。

 東京電力福島第一原発から南へ約10キロの福島県富岡町で生まれ育った。中学2年だった2011年3月11日の震災当時は、地元の強豪校・町立富岡第一中で活動していたが、原発事故に伴う避難生活で、プレーできない空白が生まれた。再びラケットを握ったのは2カ月後。80キロ離れた同県猪苗代町に避難し、同様に避難してきた部員たちと「特設バドミントン部」を結成した。

 ただ結成前後、何度も脳裏をよぎる原発事故直後の記憶と、慣れない土地での生活で「もうバドミントンができなくなると思った。何度も気持ちが不安定になり、練習する気持ちが起きなかった」と振り返る。

 それでも続けられたのは、部員たちと「今やれることを全力でやろう」と励まし合い、モチベーションを高め続けたからだ。避難先の住民らからシャトルや練習着、町の体育館を提供してもらえた支援も大きな支えになった。

 「あんなに怖いことを乗り越えたのだから、どんな試練にも耐えられる」。そんな思いを胸に練習を続け、中学3年の夏には、全国中学校体育大会で、団体、個人ともに頂点に立った。その後、猪苗代町などで授業や部活動を再開した県立富岡高校に進学し、2年の時にアジアユース選手権シングルスでも優勝。大きな飛躍を見せた。

 大堀選手は今、あの時と同じ状況が訪れていると感じている。新型コロナの感染拡大、それに伴う休校……。スポーツどころではない。高校総体高校野球と、若者のスポーツの機会すら奪われた。事態はむしろ、9年前の震災時よりも深刻ではないか。

 それでも震災の時の経験を踏まえ、若者たちにこう呼びかける。「目標がなくなり、つらいと思います。でも、今腐らずにやっていけば、次のステップに進んだ時、絶対に生かされるはずです」。終息時期は見通せないが「先のことをイメージし、できることをこつこつやってほしい。努力が実る日は必ず来ます」

 大堀選手は高校卒業後、NTT東日本を経て、16年からトナミ運輸でプレーする。現在、世界ランキング19位。練習もままならない状況だが、来年に東京五輪があると信じ、女子シングルス日本代表の出場枠「2」を勝ち取る目標を抱き続ける。

 「今はすべての大会で内容の濃い、納得のいく試合ができるよう全力で戦う。最後まで絶対に諦めず五輪を目指して頑張ります」(野田佑介)

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