犬任せの旅に同行取材 シェルパ斉藤に聞く歩き旅の魅力

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斎藤健一郎
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 犬連れヒッチハイクに耕運機での日本縦断、世界10大トレイル巡り……。バックパッカーで紀行作家の斉藤政喜さん(59)は、型にはまらない旅を続け、書き続けてきました。常に日本のバックパッカーの先頭を歩き続けている、その原動力とは。

記者が斉藤さんの旅に同行しながら、お話を聞きました。記事の後半では、インタビューをお読み頂けます。

 「シェルパ斉藤」のペンネームで小学館のアウトドア誌「BE―PAL(ビーパル)」に、東京と大阪を結ぶ東海自然歩道をただひたすら歩く連載を始めたのは、斉藤さんがネパールから帰った後の28歳の時だった。旅先で出会う人たちとの交流や先が見通せない旅の行方、テンポのいい筆致が評判になり、たちまち人気になった。

歩いたトレイル、60本以上

 それから30年余、連載は今も読者の支持を集め、還暦を前にした今年、歩く旅の集大成となる『シェルパ斉藤の遊歩見聞録』を発表した。33作目となった著作にこうある。「人と競うこともなく、寄り道や道草をして歩き、多くの人に出会い、数々の経験を積んだ」。歩いた国内外のトレイルは60本以上、テント泊は千回を超える。

 生産性や効率が重視され、社会全体が目標に向かって疾走する横で、バックパックを背負い、歩を進め、競争の激しい文筆の世界を渡ってきた。連載開始前から付き合うビーパルの元編集長・酒井直人さん(56)は「等身大で飾らない姿勢は出会った人をどんどんハッピーにさせる。まねできそうで他の誰にもできない、代わりのいない存在」と評する。

上京… 押しつぶされそうな日々

 歩みの原点に、高校3年の時の一家離散がある。父が事業に失敗。家族は散り散りになり、東京でひとり、生きなければならなくなった。「つらかった。でも自由だとも思った。生きるも、のたれ死ぬも自分次第だと」

 押しつぶされそうな日々を救ったのが旅だった。「旅の途上ではみな平等で、どこへ行くのも何を食べるのも自由。多くの人と出会って、語らい、旅は祭りのようでした」

 長良川河口堰(かこうぜき)の反対運動で出会った妻の京子さん(61)と、八ケ岳のふもとに建てたログハウスで自然の移ろいとともに暮らす。生まれた我が子や飼う犬猫には一歩、ニホ、サンポ、南歩と「歩」のつく名前をつけてきた。

「歩けば気持ちも前に向く」

 歩くことで人生を前向きに開き続けてきた人の歩みが、このコロナ禍で止まってしまっているのではないか。

 そんな心配は無用だった。愛犬センポの散歩の延長で、犬の歩むがままに進む旅に出るという。「歩けば気持ちも前に向きますよ」

 同行を申し出た。テントと食材を背負い、犬にリードを引かれ、富士のふもとへ踏み出す。目的地さえわからない旅は、どこへ向かうのか。斎藤健一郎

ここからは、斉藤さんの一問一答です。歩く旅を始めた理由、その魅力について語っています。

 ――犬のセンポまかせの旅。どうやらゴルフ場に入ってきてしまったようです。大丈夫でしょうか?

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 ドキドキするなあ。立ち入り…

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