あいトリ出展の作家、今も上映できず 抗議1万件の余波

有料記事トリエンナーレを考える

原知恵子 前川浩之
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 大量の抗議で企画展が3日で中止になった国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の開幕から、8月1日で1年。芸術祭がもたらしたものとはなんだったのでしょうか。関係者への取材から、その意義や課題、残る影響を探ります。

 「1年たって振り返ると、中止になって良いことって何一つなかったね」

 昨夏の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」の出品作家・大浦信行さん(71)は、自身が監督した映画「遠近を抱えた女」(98分)の上映館が見つからないままだ。

海外の映画祭で評判、でも国内上映は…

 映画はある女性を主人公にしたドキュメンタリーで、不自由展に出品して多数の抗議を受けた映像作品(20分)は、この映画からの引用もある。作品としては別だが、映画と映像作品両方に昭和天皇を含む肖像群が燃える場面がある。

 今年2月、ベルギーであった「ブリュッセル独立映画祭」は、約3千の出品作からオープニング作品の一つにこの映画を選び、「日本の貧困女性の正直な生き方がまっすぐに伝わる」「映像もクール」などと評価した。撮影も担当したプロデューサー辻智彦さん(49)は「試写会の評判も良く、完成度も自信がある」。

 だが、つきあいのあるミニシアターなどに上映を掛け合っても、歯切れが悪い。ある配給会社の人には「映画館は商業施設。リスクを負ってまでやる人はいませんよ」と言われた。

 開幕3日で不自由展を中止に追い込んだ抗議は、電話やメール、ファクスで、8月の1カ月間に1万379件。「税金を投じた芸術祭でなく、やるなら民間で」という理屈が目立った。でも、辻さんは「内容が許せないという人がいる。民間だから上映しても大丈夫なんて、民間の人は誰も思わない。僕がそう説得したら能天気なやつと思われる……」と肩を落とす。あれから1年後の今、自主上映の道を模索している。

抗議への対処、探る動きも

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 抗議への対処方法を探る動き…

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