彦根城VS飛鳥・藤原 世界遺産へ関西対決、強みと弱み

有料記事

編集委員・中村俊介
【動画】世界遺産登録を目指す彦根城と飛鳥・藤原=依知川和大撮影
[PR]

 国連教育科学文化機関ユネスコ)の世界遺産に向け、関西の2候補が火花を散らしている。滋賀県の「彦根城」と奈良県の「飛鳥・藤原の宮都(きゅうと)とその関連資産群」だ。この春、年にひと枠の国内推薦獲得をめざして推薦書原案を相次いで国に提出し、ともに登録目標を2024年に設定。新型コロナウイルス禍で日程は流動的だが、“関西対決”を見据え、それぞれ最短での実現を模索している。

 同じ年の登録目標「たまたま」

 世界遺産は毎年1回、新規登録の可否が世界遺産委員会で審議される。歴史的建造物など人類文明の足跡を対象とする文化遺産の分野は8割近くを占め、観光資源としても人気が高い。国内に19件、関西では法隆寺姫路城、京都や奈良の社寺、紀伊山地の霊場や古道などがある。

世界遺産 

1972年、ユネスコ総会で採択された世界遺産条約にのっとり、各国政府が推薦する候補を世界遺産委員会が審議し、「顕著な普遍的価値(OUV)」があるものをリストに登録する。記念物や建造物、遺跡などの文化遺産、特徴的な地形や貴重な生態系などの自然遺産、両者を兼ねた複合遺産がある。毎夏開かれる委員会での審議に先立ち、ユネスコの諮問機関がその価値を調査・勧告する。2020年現在1121件。日本の登録物件は文化遺産、自然遺産合わせて23件。

 新たに挑戦の動きを加速させているのが「彦根城」と「飛鳥・藤原」だ。昨夏登録の「百舌鳥(もず)・古市(ふるいち)古墳群」(大阪府)に続けとばかりに意気は上がる。

 悩ましいのは両者とも24年の登録を視野に入れていること。国内からの推薦は1年に1件だから、近畿勢同士の一騎打ちになる可能性が浮上したのだ。

 「たまたまそうなった」と両陣営。それぞれ作業工程や推薦書原案の修正作業などを考慮したうえでの現実的な設定だという。逆算すると22年の文化審議会で、ライバルとして国内推薦の内定を争うことになる。

 同一エリア内で敵味方に分かれてしのぎを削った例は過去にもある。13年、内閣官房が推す「明治日本の産業革命遺産」(鹿児島県など8県)と文化庁が推す「長崎の教会群(当時)」(長崎県熊本県)の“九州対決”だ。国などへの陳情合戦の末、政府部内の裁定で産業遺産側に軍配が上がったが、後味の悪さを残した。

 「いい推薦書を作るだけ」と滋賀県文化財保護課。奈良県文化資源活用課も「粛々と準備する」という。とはいえ、国内推薦の条件となる「暫定リスト」をめぐって、近く記載物件の追加措置があるのでは、ともささやかれており、お互い“新参者”に先を越されるわけにはいかないとの思いもありそうだ。

記事後半では、双方にどんな懸念材料があるのか解説しているほか、世界遺産に詳しい識者の見方も紹介しています。

ここから続き

■両者抱える悩み…

この記事は有料記事です。残り1992文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら