香港で広がる密告の影 新法で萎縮「文化大革命のよう」

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 香港の中学と高校で教師を務める楊子俊さん(30)は昨年6月の抗議デモで、右目の視力をほぼ失った。警察が撃った催涙弾の直撃を受けたからだ。

 それから1年。楊さんは自身の体験やデモへの考えをまとめた本を7月に出版する計画だったが、思わぬ展開が待っていた。

 「この内容だと印刷は難しい」。6月上旬、原稿を持ち込んだ地元の業者3社から相次いで断られた。業者は理由を語ろうとしなかったが、察しはついた。そのころ、中国が国家安全法制の導入を決めていた。「当局から目をつけられるのを恐れたのだろう」

 台湾の業者に印刷を発注し、何とか出版のメドは立った。だが、出版が遅れたため、7月15日から始まる見本市「香港ブックフェア」への出展はかなわなかった。

 楊さんは懸念する。「自己検閲する雰囲気が社会全体に早くも広がっている」

萎縮する言論や出版

 例年約100万人の来場者を集めるブックフェアは、香港の言論や出版の自由を象徴する存在だ。天安門事件関連など中国本土では取り締まりの対象となる書籍の販売も問題なかった。

 しかし、今後は処罰されるのではないか――。出展者の間でそんな不安が広がっている。

香港国家安全維持法が成立し、一国二制度が形骸化しかねない状況です。香港では自由は萎縮し、諦めムードから抗議デモも勢いを欠いています。

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 きっかけは過激な親中派の政…

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