第13回男子100m代表、来春に持ち越し けが明け山県の思い

有料記事アスリートの現在地 東京五輪

堀川貴弘

新型コロナウイルスの影響で延期になった東京オリンピック。突如できた1年の空白期間は、アスリートたちにどう影響するのか。担当記者が探りました。

[PR]

 東京五輪陸上男子100メートルの日本代表の枠は3。予定通り開かれていたら、スタートラインに立ったのは誰だったのか。

 本来ならば、6月25~28日に大阪で開かれる日本選手権で代表が決まるはずだった。9秒97の日本記録を持つサニブラウン・ハキームを筆頭とした桐生祥秀小池祐貴の9秒台トリオか。それとも10秒0台の自己記録を持つ山県亮太多田修平飯塚翔太ケンブリッジ飛鳥らの巻き返しか。

 男子100メートルの五輪参加標準記録は10秒05。記録を達成して3位以内に入れば東京五輪出場が決まった。

 だが、激戦の代表争いは五輪延期で、来春に持ち越しになった。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で試合が行われない中、世界陸連は11月末日まで「凍結」措置を設けた。延期で10月1日から3日間、新潟市で開催されることが決まった日本選手権を始め、この期間にいくら好記録を出しても、標準記録突破者の資格は得られないことになった。

 サニブラウン、桐生、小池は昨年、標準記録を突破し、この資格は維持されることになったが、到達できていない選手の中には、「凍結」措置にモチベーションの低下を訴える者もいるという。記録が五輪につながらない今季の大会。ただ、言い換えれば、様々なチャレンジのできる期間と言えるかもしれない。

 山県は昨年、背中の痛みや肺気胸などで5月のゴールデングランプリを最後に競技会から姿を消した。9~10月にドーハであった世界選手権の出場も逃している。最近、動画サイトで「1年以上試合に出ていないので不安はある。練習はいい感じだが、試合の雰囲気は違う」と語った。

 けがから復帰したばかりの山県には実戦の感覚を取り戻す場がまだない。「日本選手権で自己ベストを出して、『山県頑張っているな』と思われるようにしたい」。日本選手4人目の9秒台突入に意欲的だ。

 短距離陣のまとめ役としても期待される飯塚は「今年は五輪選考に入らないので試合に出る人、出ない人が分かれる感じがします。僕自身は日本選手権に向けてしっかり走りたい。今はレースがしたい」。本職の200メートルで自己記録(20秒11)にどこまで迫れるか。

 この凍結期間は、代表争いをどう左右するか。日本陸連の麻場一徳強化委員長は「選手のモチベーションの低下を心配していたが、SNSでの発信などを見ていると、大丈夫そうだ。ここから動いていけば五輪には十分間に合う」と語る。標準記録を突破していない選手たちの奮起が短距離界の底上げとなる。

陸上の「現在地」

 陸上はマラソンの男女6人、競歩の男女7人が代表に内定しており、この計13人は来年の五輪に出場できる。トラックとフィールド種目については、来春の日本選手権で決まる。参加標準記録を突破した選手のほか、突破しなくても世界ランキングで出場できる可能性がある。ただし、今年11月末日まで参加標準記録も世界ランキングも「凍結」されることが世界陸連から発表されている。

他人を思いやる課程、きっと良い結果に

ここから続き

 「タータンのにおいがすごく…

この記事は有料記事です。残り480文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【お得なキャンペーン中】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら

連載アスリートの現在地 東京五輪(全24回)

この連載の一覧を見る